PJA NEWS)2018年12月3日
低所得者向け無料SIMを用意 タイの社会福祉政策の内容とは?
本日の現地大手英字紙のBangkokPostが、タイ政府が低所得者向けに無料SIMを準備している事を伝えています。
Bangkok Post)Government readies handout of free sim cards (2018年12月3日)
Bangkok Post)タイ政府、無料SIMカードを準備
https://www.bangkokpost.com/news/politics/1586370/government-readies-handout-of-free-sim-cards
報道されている概要は以下の通りです。
財務大臣が、現在低所得者向けの福祉カードを受け取っている人に、無料でインターネットに接続できるSIMを準備している事を明らかにしました。
財務大臣はコメントで次のように語りました。
「低所得者向けの無料SIMの目的は、インターネット上の情報を皆が見られるようにするためです。」
「たとえば農業において、農産物の需給による価格予測がわかれば、農家の方は過剰生産を避けて、より良く農業の生産計画が立てられるはずです、そのような趣旨の無料SIMです。」
加えて大臣は、この政策が(来年二月に予定されている)選挙の票集めを目的としたものではないとしました。
大臣は、年収10万バーツ未満の人がタイには1,470万人もおり、その人たちが、政府の適切なインターネット上の情報を得られるようにするための政策であって、決して音楽や映画、ゲームのために提供するものではないことを説明しました。
低所得者向けの福祉カードは次回、(選挙後の)来年に実施される見込みで、無料SIMはそれに伴っての政策となる見込みです。
ここまでが、報道されている内容の概要です。
タイの貧富の差は激しく、政府統計でも年収10万バーツに満たない人が1,470万人もいるということです。タイの人口は約6904万人(2017年度)なので、統計情報においても20%を超える、年収10万バーツ未満の低所得者層がいることになります。
タイ現地の目線で見ると、タイの一般的な庶民の場合、お金のやりとりも現金ばかりで電子化も進んでおらず、そもそも政府が収入実態を把握できていないケースが多い為、上記のような統計情報についてはどこまで正確に反映されているか疑問があり、鵜呑みにはできません。
ただ、少なくとも貧富の差が激しい事は現地感覚においても事実の通りで、しかもタイでは富の再配分が少ないために、富裕層による横暴や不公平感が大きな社会問題となっています。
PJA NEWS過去記事)ホテル従業員が工業団地幹部に喫煙を注意し殴られ、大きな反響に<動画付き>(2018年11月25日)
上記の過去記事のように、生まれながらにして富裕層という人の横暴が目立ってくると、生まれながらにお金持ち、貧乏なのが固定化して不満がたまる社会となってしまい、まるで中世の貴族社会のような状況になってしまうわけです。
このように貧富の差が大きい状況下で、タイ政府が低所得者向けに無料SIMを使えるようにする社会福祉政策などは、上手く実施すれば効果はあるのではないかと思います。
ただ、現在は時期が選挙前で、かつ内容の詳細がわからない今は、選挙対策だという批判が集まるのは仕方がないでしょうね。
外国人の目線で見ると、低所得者向け政策はセーフティーネットとして大切ですが、その政策で施しを与えるだけでは、かえって低所得者の労働意欲をそいでしまい、国としての生産性が低下してしまう政策になってしまいます。日本の生活保護等と同様の問題ですね。
勤労意欲の刺激がないと、バラマキだという批判を受けてしまいます。そのため福祉政策としては、福祉を受ける人たちが、より労働意欲を出すような政策にしなければいけないので、そうするためにどのような内容にしていくかという政策の内容に興味がわきます。
タイ政府は現在、以下の過去記事の通り固定資産税の導入を2020年1月1日から予定し、富の再配分を進める政策を予定しています。
PJA NEWS 過去記事)タイで新固定資産税が2020年1月より施行予定!その内容とは!? (2018年12月1日)
タイの社会においての社会福祉政策、もっと言えば、社会構造における富の再配分が進み、努力し成果を出した人間が評価される社会に変わるのか、興味深くなるニュースですね。
「国富の原因たるものは、労働一般である」(アダム・スミス著「国富論」 1776年3月9日発刊)
そんな18世紀の古典的な経済学の言葉を思い出させられました。
アダム・スミス「国富論」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AF%8C%E8%AB%96
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