PJA NEWS)2018年12月12日

プラユット首相、低所得者向け現金の不正受給を調査へ

タイのプラユット首相が、低所得者層向けに支給されている一人500バーツの現金について、不正受給の実態を調査する命令を出しました。

 

タイでは、収入が一定以下の低所得者の約1130万人を対象として、一人あたり500バーツの現金の支給を行っています。

タイの人口は約6904万人(2017年度)ですので、その16%強という広範囲にわたり、先週の土曜の8日から支給を開始しました。土曜日に支給が始まると、国営銀行のクルンタイ銀行のタイ全土の支店で引き出せるようになった為、先週末の土曜からは多くのタイ人の方がクルンタイ銀行に来られて、並んで大混雑となっている様子が見られました。

その様子を、以下の本日のPattaya Oneが伝えています。

(写真:Pattaya One)

Pattaya One)CASH RUSH! COMMOTION AS CROWDS HUSTLE FOR 500B HOLIDAY HANDOUT (2018年12月12日)
https://pattayaone.news/500b-holiday-handout/

報道によると、実際の給付現場では手続きが複雑すぎる、そのため待ち時間が長すぎる等の苦情も多く出ていました。

しかしながら実際の給付は進み、現地報道によると、開始してからわずか3日の時点で、合計金額の約56.6憶バーツの半分にあたる23億バーツが引き出されました。

この大規模な現金給付政策には、タイ現地メディアでも選挙前の低所得者へのバラマキの”クリスマス・プレゼント”だという批判が多く出ています。

そんな中で、首にゴールドチェーンまでつけた裕福そうなタイ人女性が、この低所得者向けの給付を受け取ったとして500バーツと低所得者向けの社会福祉カードの写真をFacebookに投稿、これが不正受給じゃないかと大きな批判を呼ぶ事件がありました。

この件は先週の日曜の12月10日に、タイ現地メディアのSanookが以下の記事で伝えています。

Sanook)ゴールドチェーンをまとった女性が、低所得者向けの500バーツと社会福祉カードを見せつける (2018年12月10日)
https://www.sanook.com/news/7605306/

このような事から、低所得者向け給付の不正受給が横行しているのではないかと大きな批判が起きています。

これを受けてタイのプラユット首相は、財務省に不正受給の疑いについて実態調査を命じました。

このプラユット首相の命令は、以下の本日のBangkok Postが伝えています。

Bangkok Post)Fake paupers exploiting state welfare cards, says PM (2018年12月12日)
Bangkok Post)首相、”偽の貧困者”が福祉カードを悪用している可能性に言及
https://www.bangkokpost.com/news/politics/1592118/fake-paupers-exploiting-state-welfare-cards-says-pm

上記記事は、プラユット首相が財務省に、不正受給の実態を調査するよう命じた事が報じられています。

 

低所得者向けに現金で、一人500バーツを銀行で配布した今回の社会福祉政策。

外国人の目線で見ると、国が行う政策としては、そもそも税金の徴税にもコストがかかり、それを銀行で配布するとなれば、配布コストの効率が悪い事が懸念される面があります。

国の政策としては、そうやってコストをかけて集めた国のお金を、たとえば教育につなげて生産性を高める、たとえば公共事業で高速道路や鉄道への投資を行って、投資以上の経済効果を上げて、将来の税収を何倍、何十倍にも高い割合で増やす事を目標に、政策を考えていくべきというのが政策立案の基本となる考え方です。

今回の500バーツの現金給付は、経済効果の面で考えると非常に効率が悪く、政策立案の基本からは外れています。そのため、これではバラマキだ、選挙目当てだという批判がタイ国内から出てくるのは仕方がないと思います。

外国人の目線で考えると、それなら単に税率を下げれば良いとも思う話なんですが、一方でタイの現地の目線で見ると、タイの低所得者はそもそも税金を支払っていない事が一般的なので、税率を低下しても恩恵がなかなか行き届きにくいという現実もありますから、それが背景となって今回の政策となったのではないかと思います。

これを実施すると、富裕層からは、支払った税金が効率的に使われていない、税金は低所得者向けに使われて、富裕層の自分たちには使われていないという不満や不公平感が出てきます。

そんな不満が出ている中で、今度は不正受給が疑われるケースが横行し、Facebookではゴールドチェーンと共に、低所得者向けの社会福祉カードの保有や500バーツの受領を写真付きで自慢する人間まで出てきているわけですから、そりゃぁ不公平感が強くなりますね。

日本人の目線で見ると、日本の生活保護の不正受給などに似ている問題にも感じます。ただ、日本と比べるとタイの場合は、現在は軍政のプラユット首相が超法規的な巨大な権限を有しているため、なかなか国が動けず時間がかかる日本よりも、はるかに迅速に国が動いて対応する事が出来るという面があるのも伝わりますね。

貧富の差が大きいタイで、このような政策がどのような影響をもたらすのか、興味深くなるニュースです。

この記事が気に入ったら
いいね ! シェア ! しよう

タイ情報で、にほんブログ村ランキングに参加中! 見ていただいた記事には、是非以下にクリックをお願いします。

にほんブログ村 海外生活ブログ タイ情報へランキングにクリック!