サウジ女性問題 豪の会見で、バーレーンサッカー選手問題にも展開
一昨日の2019年1月8日にPJA NEWSで以下の通り報じた、スワンナプーム空港でサウジの家族から逃げる事を求めて、第三国への亡命を求め国連難民高等弁務官事務所の保護下に入ったサウジ女性の件の続報です。
既報の通り、2019年1月7日に女性は国連難民高等弁務官事務所の保護下となっていました。
その2日後の1月9日、サウジアラビアから女性の父親がタイを訪れて面会を求めましたが、女性は面会を拒否。これをうけてタイ当局は父親との面会設定を拒否し、父親は面会できずにサウジアラビアへの帰途につきました。
この様子は、以下のパタヤ現地英字メディアのPattaya Oneなどが伝えています。
Pattaya One)Saudi Arabian teen refuses to meet her father (2019年1月10日)
Pattaya One)サウジ女性、父親との面会を拒絶
https://pattayaone.news/en/saudi-arabian-teen-refuses/
(写真:Pattaya Oneより)
女性はもともとオーストラリアに難民として行く意向でしたが、オーストラリア政府側も女性の難民申請の審議に入った事を明かし、審議がされています。
そして、父親との面会を拒絶した翌日の1月10日(木)、オーストラリア政府外相はタイのバンコクで記者会見を開き、本件でサウジアラビアへの強制送還をせず女性を保護したタイ政府を称賛するコメントを出しました。
タイの大手英字メディアのBangkok Postが伝えています。
Bangkok Post)Australia praises Thai action on Saudi runaway (2019年1月10日)
Bangkok Post)豪政府、サウジ政府の暴走を止めたタイを称賛
https://www.bangkokpost.com/news/general/1608922/australia-praises-thai-action-on-saudi-runaway
報道によると、豪政府外相は昨日の2019年1月10日(木)バンコクで記者会見を開き、タイ政府がサウジアラビアへの女性の強制送還に応じず、女性を保護した事を称賛した事を伝えています。
また豪政府外相は会見で、タイ政府が現在、バーレーンのサッカー選手がオーストラリアに亡命が認められているにもかかわらず、タイで拘束されている事への懸念を語った事も報じられています。
上記で豪政府外相が語ったバーレーンのサッカー選手のタイでの拘束問題とは、元バーレーン代表DFのハキーム・アル・アライビ氏(25歳)が、タイで身柄を拘束されている問題です。
同氏の兄はバーレーンの政治活動家であったことから、同氏はバーレーン政府から目をつけられ、数々の逮捕などの迫害を受けているとして国外へ亡命しました。2014年、同氏はオーストラリアへの難民申請が認められ、オーストラリアのメルボルン州リーグのパスコー・ヴェイルFCでプレイするサッカー選手となって生活していましたが、同氏がタイを訪問した折にバーレーン政府の要請で、タイ当局により身柄を拘束されています。
この問題については人権団体なども懸念を表明しており、国際的な注目が集まっていました。
そして豪外相の会見の内容に呼応したのでしょう。
本日の1月11日(金)、国際サッカー連盟(FIFA)が異例の声明を出し、タイ政府に同氏の解放を求め、世界的に大きなニュースとなっています。
時事ドットコムニュース)バーレーン難民のサッカー選手拘束=FIFAが解放要求-タイ (2019年1月11日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019011100779
このように本件は今日までに、サウジ女性の国連による保護からバーレーンのサッカー選手を拘束している問題にまで拡大しています。
国際社会においては、サウジアラビア政府は昨年の2018年10月20日、在トルコ総領事館内でジャーナリストのジャマル・カショギ氏を殺害し、国際的に猛烈な批判を浴びている中にありますから、今回のタイでのサウジ女性の対応により、さらに国際的な評価を落としています。
タイ政府は、今回の女性の問題が世界的に大きなニュースとなる中で、サウジアラビアへの強制送還を拒絶し国連とともに保護した事で、国際的な評価を高めた所ですが、その難民受け入れ先の有力候補である豪政府の外相から、バーレーンのサッカー選手の拘束問題という新たな問題提起がされ、この後の対応に注目が集まります。
オーストラリア政府は、本件のサウジ女性への保護は勿論、バーレーンのサッカー選手の保護にも展開する非常に積極的な難民保護の姿勢は、世界的にも非常に高く評価されるべきでしょう。オーストラリア政府の対応は傑出しており、本来の人権意識と難民保護とは、こうあるべきと思わせてくれます。
困っていると知りながら助けを求められるのを待っている人間は、助けを断るのと同じくらい冷酷である。
(ダンテ・アリギエーリ(*) イタリア・フィレンツェ出身の哲学者、詩人<1265~1321年>)
今回のオーストラリア政府の対応の早さ、積極性を見て、このようなダンテの言葉を思い出しました。
空港で18歳のサウジの女性がツイッターで助けを求めた事が発端の本事件は、各国政府の人権意識や難民への意識の違いも注目される状況となってきました。
タイ政府としては、今年の2019年にはアセアン(東南アジア諸国連合)の議長国となる折に、人権意識の高さの評価は高めておきたい状況にあります。その中で、今後どのようにタイ政府が対応をし、本件が推移するのか、世界的に注目が集まることになりそうです。
本件については、また続報の予定です。
(*)ダンテ・アリギエーリ
イタリアのフィレンツェ出身の哲学者であり、同時にイタリアで最も偉大と評価される詩人。ルネッサンス文化の先駆け的存在。
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