中国政府「タイでの日中協力事業は一帯一路の一環」日本政府は否定
以下の、2019年3月7日に報じたタイ高速鉄道などの取り組みについて続報です。
PJAニュース過去記事)2019年3月6日
タイ高速鉄道:中国との路線、2つ目11kmの建設契約をタイ企業が締結
以下の、日本の産経新聞の記事をご紹介します。
産経新聞)タイでの日中協力事業 中国「一帯一路の一環」(2019年3月6日)
https://www.sankei.com/world/news/190306/wor1903060026-n1.html
中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の寧吉哲(ねい・きちてつ)副主任は6日、開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)に合わせた記者会見で、巨大経済圏構想「一帯一路」の発展に向けた施策として「中国と日本がタイで(第三国市場における)協力を開始した」と述べた。
安倍晋三首相が訪中した昨年10月、日中両国の企業などはタイでのスマートシティー開発を含む52件の協力覚書を締結した。日本政府は、中国との第三国での経済協力について「基本的には一帯一路と関係ない」(世耕弘成経済産業相)との立場だが、中国側は明確に一帯一路の一環として位置付けていることが改めて確認された。
上記報道の通り、中国政府が現在進めている巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、タイで日中協力事業を開始した事を今週水曜の3月6日に北京で発表しました。
中国政府の国家発展改革委員会の副主任は合わせて、昨年の中国政府による一帯一路の沿線国への直接投資額は156億ドル(約1兆7千億円)にのぼり、日本の他にフランス、シンガポールと協力している事を発表しました。
中国政府としては昨年来、米国との関係が貿易戦争などでギクシャクする中で、日本やフランス、シンガポールなど第三国に接近し、国際社会での支持を増やしたいという思惑が垣間見えます。
その中で昨年10月に日本の安倍首相は訪中し、中国政府とタイでのスマートシティー開発を含む52件の協力覚書を締結しました。
(2018年10月26日:安倍首相訪中、署名式へ立ち会い
写真:<日本>首相官邸)
以下のPJAニュースの過去記事の通り、この日中協力事業にはタイ高速鉄道の所謂「EEC路線」なども含まれており、政治主導での日中協力事業となるかと話題となっていましたが、現実は大きく隔たりがある状態が続いています。
PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道で唯一実現性の高いEEC路線、政治と現実に隔たり (2018年11月1日)
https://pattayaja.com/2018/11/01/pja-news%E3%82%BF%E3%82%A4%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%89%84%E9%81%9
今回の中国政府の発表は、中国政府側はこの日中協力を明確に「一帯一路」政策の一環と位置付けている事を示したものです。
しかしながら日本政府側は世耕外務大臣の発言の通り、この日中協力事業は「基本的には一帯一路と関係ない」という立場であり、日中政府の位置づけの違いが、とても明確となりましたね。
(2018年10月、安倍首相訪中時の講演
写真:<日本>首相官邸)
現状、このうち実現性が高いタイ高速鉄道のEEC路線は前回記事の以下の通り、タイの有力財閥であるCPグループが率いるコンソーシアムが最低価額を応札し、タイ国営鉄道(SRT)との交渉をしており、次回は3月19日に交渉の予定となっていますが、今だ折り合いがついていません。
タイ高速鉄道計画ではバンコクのドンムアン空港、スワンナプーム空港、ラヨーンのラヨーン空港の3空港を結ぶ、いわゆる「EEC路線」について注目が集まっていますが、タイ国営鉄道(SRT)は昨日、同路線についてタイ有力財閥のCPグループ率いるコンソーシアムとの協議を、3月19日に延期した事を語りました。
同コンソーシアムは最低価格で応札しましたが、タイ国営鉄道(SRT)側の要望と、内容がいまだに折り合いがつかず、協議は遅れています。CPグループのコンソーシアムとの契約がまとまらなかった場合、次に応札額を出しているBSRジョイントベンチャーが交渉に入る見込みです。
CPグループとの交渉がまとまらなかった場合、次はBSRジョイントベンチャーが交渉に入るとしています。これはタイのバンコクのBTSなどが中心となった企業グループとなりますが、いずれにしても、日本が主導して進めるというものとはならない見込みです。
今回、中国が明確に「一帯一路」の一環だとしたことで、タイ高速鉄道のEEC路線などでは、日本側は日本企業の多くが協力に前向きにはなりにくくなるなど、影響が出てくる可能性がありそうです。
タイの高速鉄道などの今後の推移に、注目が高まります。
(写真は高速鉄道イメージ)
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