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タイ高速鉄道:EEC路線はまだ要調整、日本の国際協力銀は懸念






2019年3月20日 PJA NEWS)

タイ高速鉄道:EEC路線はまだ要調整、日本の国際協力銀は懸念

タイ高速鉄道のうち、日本の国際協力銀行(JBIC)が支援を検討している、バンコクのドンムアン空港からスワンナプーム空港、ラヨーンのウタパオ空港までの3空港を結ぶ”EEC路線”に続報です。

タイ高速鉄道EEC路線(画像:EEC実行委員会<タイ>)

同路線についての最新の過去記事は、以下をご覧下さい。

PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道:日本の国際協力銀行、EEC路線を支援検討 (2019年3月10日)
https://pattayaja.com/2019/03/10/005/

タイ大手英字メディアのBangkokPostは今朝、同路線についてタイ有力財閥のCPグループとの交渉で、いまだ「調整が必要」な状況である事を伝えています。

BangkokPost)Airport rail pact ‘needs fine-tuning’ (2019年3月20日)
BangkokPost)タイ高速鉄道の空港路線「要調整」
https://www.bangkokpost.com/news/general/1647556/airport-rail-pact-needs-fine-tuning

報道によると、同路線について最低額である1172憶バーツで入札した、タイ有力財閥のCPグループが率いるコンソーシアムとSRT(タイ国営鉄道)との協議が昨日の2019年3月20日(火)に行われました。協議では、事前にCPグループ率いるコンソーシアム側が契約期間を99年間を求めるのではと言われているなどしましたが、SRT側と50年で合意に至る動きとなっています。

これについてSRT側は協議後のコメントで「タイ政府側が、コンソーシアムによる高速鉄道の運営が効果的で責任ある対応であると判断すれば、契約期間を伸ばす事ができる。」と語り、契約期間なども調整が進み、契約締結に向けて協議が進んでいることを説明しました。

契約締結に向けては、まだ他の多様な内容についても調整が必要な状況ですが、今後も協議が行われる予定であり、次はタイ総選挙後の今月28日に協議の予定としています。

タイ有力財閥のCPグループが率いるこのコンソーシアムは、主にCPグループとBangkok Expressway and Metro Plc、中国鉄道建設公司、Ch Karnchang、イタリア – タイ建設Plcなどで構成され、1172憶バーツの最低価格で入札しています。

一方でSRT(タイ国営鉄道)幹部はコメントで、同コンソーシアムは資金調達について日本の政策金融機関である国際協力銀行(JBIC、前田匡史総裁)を含めいくつかと協議をしていますが、日本の国際協力銀行は今月24日のタイ総選挙の後に、この路線計画に影響が出ないかについて懸念を表明している事を明かしました。

(2019年3月7日 タイ首相官邸にて
日本の国際協力銀行(JBIC)の前田匡史総裁訪問

写真:タイ首相官邸)

報道されている概要は上記の通りです。

PJAニュースの以下の過去記事の通り、タイ高速鉄道の中で実現性が高いEEC路線も、政治主導で日中協力事業となった事で、どうなるか推移に注目が集まっています。

PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道で唯一実現性の高いEEC路線、政治と現実に隔たり (2018年11月1日)
https://pattayaja.com/2018/11/01/pja-news%E3%82%BF%E3%82%A4%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%89%84%E9%81%9

本路線は現状、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しており、日本政府はこれを否定している最中にあります。

PJAニュース過去記事)中国政府「タイでの日中協力事業は一帯一路の一環」日本政府は否定(2019年3月9日)
https://pattayaja.com/2019/03/09/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%94%BF%E5%BA

本路線について、CPグループ率いるコンソーシアムがこのまま契約し建設して運営するとなると、主要な参加企業の中に日本企業の名前もなく、あるのは中国の「中国鉄道建設公司」の名前のみとなります。

この路線を現在、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しているわけですから、日本人としてはEECエリアの発展は嬉しいものの、この路線を建設するのに日本の政策金融機関である国際協力銀行(JBIC)が、2,240憶バーツ(*)の大規模な融資をして開発するなら、中国政府に「一帯一路」の一環だと位置付けられたままで実施するのではなく、タイと日本の協力の為のプロジェクトとして実施して欲しいと思います。

(*)日本の国際協力銀行の融資規模については、タイのソムキット副首相の以下のコメントによる

PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道:日本の国際協力銀行、EEC路線を支援検討
https://pattayaja.com/2019/03/10/005/

できれば高速鉄道も中国の鉄道を輸入するのではなく、日本の高速鉄道を日本企業が導入してくれるのが良いのですが、現状の交渉内容だと、残念ながらかなわなそうな流れですね。

仮にCPグループとの交渉がまとまらなかった場合、次はBSRジョイントベンチャーが交渉に入る予定となっています。こちらはタイのバンコクのBTSなどが中心となった企業グループとなりますが、いずれにしても日本が主導して進めるというものとはならないと見込まれます。

2019年3月20日追記)

上記の記事はタイメディアのBangkokPostの記事が元のため、どうしても情報元がタイ側の発表に偏ってしまいます。

そこでPJAニュースでは本記事について、日本の国際協力銀行(JBIC)に取材しました。

JBICは本日の2019年3月20日にPJAニュースの取材に答え、JBICはタイ高速鉄道の本路線についてプロジェクトの進捗を議論しているが、なんらかの決定はまだしていないこと。及び上記の今朝のBangkokPostの記事で書かれている、SRT(タイ国営鉄道)幹部が、JBICが選挙後の動向について懸念を表しているとコメントした事については、そのような事実は承知してはいない事を説明しました。

JBICの見解を確認した上で考えられるのは、タイメディアで報じられているJBICからの「2240億バーツ」の融資の金額は、タイ側の本路線へのプロジェクト必要額から想定して、報じられているものではないかと思います。

加えて、上記のタイメディアの記事で報じられているJBICの「懸念」というのは、タイ側と日本側のこのような交渉においては、両国の言葉や文化が異なる事からコミュニケーション上のギャップが発生する事が多く、片方からすると単なる質問や確認として発言している内容が、相手から見ると「懸念」として受け取られる事なども多くあるため、そのような趣旨のものではないかと思います。

※日本の国際協力銀行(JBIC)の皆様に、迅速にPJA NEWSからの取材対応をいただいている事の御礼を申し上げます。

参考)日本の国際協力銀行(JBIC)ウェブサイト
https://www.jbic.go.jp/ja/

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