2019年5月16日 PJA NEWS)

タイ経済減速、EECを中国の一帯一路政策へ

以下のニュースに続報です。

タイ総選挙)ソムキット副首相、政治遅延の悪影響を懸念(2019年4月23日)
https://pattayaja.com/2019/04/23/%E3%82%BF%E3%82%A4%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99%E3%82%BD%E3%83%A0%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%88%E5%89%AF%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%80%81%E6%94%BF%E6%B2%BB%E9%81%85%E5%BB%B6%E3%81%AE%E6%82%AA%E5%BD%B1%E9%9F%BF/

タイの経済成長が、米中貿易戦争やタイ政治の停滞で鈍化しています。

タイ大手英字メディアのBangkokPostが本日の2019年5月16日の朝、次のように報じています。

BangkokPost)Spat, uncertainty slow Thai growth (2019年5月16日)
BangkokPost)不透明感と不確実性で、タイの経済成長鈍化
https://www.bangkokpost.com/business/news/1678456/spat-uncertainty-slow-thai-growth

報道によると、米中貿易戦争の悪化により、タイの輸出は鈍化しています。
タイのソムキット副首相は今月にタイ商務省高官と会談し、タイの輸出部門の増加見込みを、これまでの8%成長の予測から引き下げる予定を語りました。

タイのGDP成長率は2018年に4.1%成長と、この6年で最高の伸びを見せていましたが、2019年は現状3.8%への減速が見込まれています。

タイのGDP成長をけん引しているのは、その約70%を占める貿易部門で、自動車やエレクトロニクスが大きな割合を占めます。そのため、これらの輸出の動向をタイ政府は注視していると、ソムキット副首相は語りました。

ソムキット副首相(タイ)
2019年1月31日 大阪の帝国ホテルでのセミナーで撮影
写真:PJAニュース

また、タイでは新政権の樹立が遅れており、これも経済停滞の大きな原因となっています。

ソムキット副首相は「新政権は、投資家のタイ政府への信頼を高めるためにも、間もなく形成される見込みです。」と述べ、「タイの多くの政党は、市場からの懸念を理解しています。タイのすべての政党が、タイの経済を前進させる責任を負うことになるわけですから、投資家の方々から御心配をされないように、新政権樹立をタイ政府は急ぎで進めています。」と語りました。

また、ソムキット氏はEEC(東部経済回廊)計画について、中国政府と将来的に一帯一路と連携させることについて協議し、中国の主要投資家をEECへの誘致をする計画を協議する事を語りました。

報道されている概要は、上記の通りです。

(写真はイメージ)

米中貿易戦争の影響は大きく、自動車やエレクトロニクスにより成長していたタイ経済も、このままだと今年は成長の鈍化が見込まれます。

一方、EEC(東部経済回廊)はタイ政府も、日中協力事業とするという安倍政権の意向を踏まえて中国からの投資の呼び込みに積極的になりつつあります。

現状タイ政府では、EECの主要事業として以下の5つの事業を優先して進めています。

2019年5月時点での、EECで優先される主要5事業
カッコ内はタイ政府発表の投資予算規模

タイ高速鉄道のEEC路線(2250憶バーツ)
ウタパオ空港都市計画(2900憶バーツ)
MRO(メンテナンス、修理、オーバーホール)センター開発の第二段階(106億バーツ)
レムチャバン港開発の第三段階(1140憶バーツ)
ラヨーンのMap Ta Phut港の第三段階開発計画(554憶バーツ)

また、以下の過去記事の通り、今月にはスマートシティー計画を立ち上げることも発表し、タイメディアのBangkokPostは日中が参加と報じています。

PJAニュース)タイメディア「日中がEECスマートシティー構想に参加」日本側認識とズレ (2019年5月7日)
https://pattayaja.com/2019/05/07/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%8C%E6%97%A5%E4%B8%AD%E3%81%8C%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E6%A7%8B%E6%83%B3%E3%81%AB%E5%8F%82/

しかしながら、日本側としてはJBIC(国際協力開発銀行)もタイ高速鉄道への融資も含めて、具体的な決定は何もされていません。JBICはPJAニュースの取材に、タイ高速鉄道含めて何ら決定はされていない事を今月も語っています。

日本側としては、日中の政府主導で進められるようになったタイのEEC開発ですが、日本企業の目線で見ると、もともとは日本勢が多数を占めていたタイのEEC開発に、中国があからさまに交通の要衝を狙って開発する動きを見せている中で、このような中国とのプロジェクトに協力する日本企業は多くありません。
加えて、そもそも国営企業がほとんどを占める中国の大手企業と、民間企業である日本の大手企業では、企業ガバナンスの体制から大きく異なり、日本企業にとっては投資のリスクがあまりにも高く、腰が引けてしまっているのが現状です。

また、タイのEECプロジェクトを現場にいる日本人の視点で見ると、中国からの投資に注目が集まるようになった現在、中国の影響力が増して日本の影響力が低下していることから、日本企業の投資において多様な面に変化が表れてきています。

一方で中国政府の視点で見ると、米中貿易戦争で中国の国内産業が危機に陥っている中で、対外投資に積極的になりずらい面が多分にあり、EEC開発にどこまで本腰を上げられるかは不透明な状況です。

このような状況の中で、タイの経済成長鈍化が大きくタイメディアでも取り上げられています。
日本としても、結びつきの強いタイ経済の今後の展開には、米中貿易戦争の行方と合わせて、今後の展開に注目が集まっています。

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