2019年6月4日 PJA NEWS)

EECエリアの住宅販売率が回復基調に

タイのEEC(東部経済回廊)計画の対象エリアであるチョンブリ県、チャチューンサオ県、ラヨーン県の3県の住宅の不動産需要では、2017~2018年にかけて供給過剰が続き需要低下が続いていましたが、販売率で見ると回復する基調にある事がタイメディアに伝えられています。

タイの大手英字メディアのBangkokPostが本日の2019年6月4日の朝、次のように伝えています。

BangkokPost)EEC-area residences see sales rates rise (2019年6月4日)
BangkokPost)EECエリアの住宅の販売率が上昇
https://property.bangkokpost.com/news/1688876/eec-area-residences-see-sales-rates-rise

記事では冒頭に、EECエリアの中心都市の一つとして、パタヤの街を写真とともに紹介しています。

報道によると、昨年後半にEECエリアの3県で発表された住宅建築計画の供給量が低下したことで、同地域の物件の平均販売率は70%以上に上昇しています。

不動産情報センター(REIC:Real Estate Information Center)のVichai Viratkapan事務局長は、EECエリアであるチョンブリ県、チャチューンサオ県、ラヨーン県の住宅需要が強い事を、BangkokPostの取材に対して次のようにコメントしています。

「東部のEECエリアの住宅需要は上昇しており、昨年度の住宅の不動産登記数の統計では57,314部屋、不動産価値1030憶バーツが登記されています。その前の期は47,256部屋、不動産価値840億バーツでしたので、登記数は上昇しており、現在の市場規模は、バンコクの首都圏に次ぐ第二位の規模となっています。」

昨年度、EECエリアの3県では新規の住宅物件が減少し、土地の割り当て許可、低層物件建築許可、コンドミニアム建築許可が減少しました。全般的には2013~2016年度にピークを迎えたEECエリアの住宅需要は、2017年から2018年に供給過剰が懸念されて低迷していました。

しかしEECエリアなど東部の人口増加率は平均で1.2%の増加であり、タイの全国平均の0.5%を上回っていることから、住宅需要は根強く、住宅の在庫の販売が回復してきています。尚、EECエリアの各県の人口増加率はチョンブリ県が2%、ラヨーン県が1.8%、チャチューンサオ県が0.7%です。

しかしながら、東部地域では住宅在庫数(5年平均)の数値も高く、東部地域は住宅在庫数(5年平均)が3.6%上昇しています。これはタイの全国平均の2.2%上昇よりも高い数値です。チョンブリ県とラヨーン県は4.6%上昇、チャチューンサオ県は3%上昇で、これらが東部地域の住宅在庫数(5年平均)の上昇率を押し上げています。

昨年度の住宅市場の調査によると、チョンブリ県、チャチューンサオ県、ラヨーン県の3県ではこれまで、974件の住宅プロジェクトにより、185,179部屋、約5612.2億バーツ相当の住宅が供給されてきましたが、この供給された部屋のうち昨年までに70.5%が販売されたとしています。

報道されている概要は上記の通りです。

(EECエリアの中心都市の一つのパタヤの街と湾
写真:PJAニュース)

パタヤなどを中心とするタイのEEC(東部経済回廊)開発ですが、特に住宅は供給過剰が続いており、現地では売れ残った誰も住んでいない物件を多く見る日々が続いています。

報道で引用されている市場調査結果は、公式な統計値ではないものの、昨年までに3県で約18万5000部屋も売れ残っていた事も表しています。このような供給過剰の現状を受けて、昨年は新規物件の発表は流石に少なくなっていました。この積みあがった住宅在庫が、ようやく売却できつつあります。

タイのEEC(東部経済回廊)計画は、以前は外資としては日本が中心的な役割を担ってきましたが、以下の過去記事の通り、日本では官邸主導で日中の第三国での協力事業という位置づけとなりました。

中国はこれを「一帯一路」の一環と位置付けて、日中協力事業として投資をしている事から、中国の存在感が急激に増しています。勿論日本政府としては、一帯一路の一環であるという事は明確に否定しています。

PJA NEWS)中国政府「タイでの日中協力事業は一帯一路の一環」日本政府は否定(2019年3月9日)
https://pattayaja.com/2019/03/09/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%80%8C%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%97%A5%E4%B8%AD%E5%8D%94%E5%8A%9B%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%81%AF%E4%B8%80%E5%B8%AF%E4%B8%80%E8%B7%AF%E3%81%AE%E4%B8%80/

(2018年10月26日:安倍首相訪中、署名式へ立ち会い
写真:<日本>首相官邸)

タイ政府側も、EEC開発に対する中国からの投資の期待は大きく、以下の過去記事の通り、EEC計画を中国の一帯一路政策と連動したものとするべく、タイ政府と中国政府との交渉が進んでいます。

PJA NEWS)タイ経済減速、EECを中国の一帯一路政策へ(2019年5月16日)
https://pattayaja.com/2019/05/16/%E3%82%BF%E3%82%A4%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%B8%9B%E9%80%9F%E3%80%81%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E4%B8%80%E5%B8%AF%E4%B8%80%E8%B7%AF%E3%82%92eec%E3%81%A8%E9%80%A3%E5%8B%95%E3%81%B8/

このような事情から、外資として日本が主要なプレイヤーだった頃には、EECエリアの不動産でも日本人が多いチョンブリ県のシラチャーの不動産市場などが話題となった事がありましたが、今はシラチャーの日本人向け不動産市場は、非常に閑散としています。
このような状況のため、多くの日本人にとっては「EECエリアの不動産需要が回復してきている」という実感は感じられないでしょう。

ただBangkokPostが今朝に上のように報じている通り、現地の人口は増加している事から需要があることや、住宅の過剰供給を受けて昨年度は新規物件の発表が少なかったことから、積みあがった在庫の部屋は、ようやく売れてきている現状にあります。

ただし、こちらも販売の現場の実情を見ると、売れ残った住宅を相当なディスカウントやオマケをつけるなどして、無理やりに販売しているのが実情ですから、不動産が良く売れているという印象はもてません。

このような状況を考えると、タイのEECエリアの不動産市場の総論としては、供給過剰で積みあがりすぎた在庫が、ようやく処分ができつつあるというぐらいが実感でしょう。

タイの不動産市場には、日本からも投資先としての目線が向けられていますが、決して容易な市場ではありません。
特に日本の老舗デベロッパーの場合は、経営陣もタイ市場への投資は「若手の育成」の為ぐらいの意識でしかない事が多く、事前の調査も内容の確認も不十分に安易な投資をして、日本企業が大きな波紋を広げているケースも増加しています。
個人レベルでも、日本人向け不動産投資を謳って集客した物件が、詐欺だと大きな騒動に広がっている問題も起きています。

海外の中進国であるタイの不動産市場は、法整備においても未整備な所が多々あります。加えて、そもそもタイでは遵法意識自体が低い企業も取り締まられずにおり、投資した外資系にも被害を広げていることから、投資のリスクが非常に高い市場となっているのです。

外資系企業や外国人がタイへ投資をする以上、それは危険性の高い市場への投資である事を理解し、細心の注意を払わなければいけません。
タイ政府にも、海外からの投資家が安心して投資が出来るように、法整備を先進国なみに整える、タイ国内の悪質なプレイヤーを厳しく取り締まるなどの、政府としての対応が求められています。

過去記事)

PJA NEWS)バンコク:東京建物の報道対応が波紋 (2019年4月2日)
https://pattayaja.com/2019/04/02/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%

(バンコクのトンローに掲載された、東京建物社とレイモンランド社の共同事業の宣伝看板
写真:PJAニュース<バンコク>)

PJA NEWS)三菱地所が”あの”レイモンランド社と共同事業、波紋が広がる (2019年5月31日)
https://pattayaja.com/2019/05/31/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E5%9C%B0%E6%89%80%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%AE%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A4%BE%E3%81%A8%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BA%8B%E6%A5%AD/

PJA NEWS)シラチャ等で大規模不動産倒産、被害者の会が設立 (2019年5月15日)
https://pattayaja.com/2019/05/15/%E3%82%B7%E3%83%A9%E3%83%81%E3%83%A3%E7%AD%89%E3%81%A7%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E5%80%92%E7%94%A3%E3%80%81%E8%A2%AB%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%81%AE%E4%BC%9A%E3%81%8C%E8%A8%AD/

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