2019年9月6日 PJA NEWS)

タイ)河野外相が日韓問題で米、タイ大手紙へ寄稿、知識人層から反響

以下の過去記事の、韓国の文大統領がタイの大手英字メディアBangkokPostで日本批判をしたニュースに続報です。

BangkokPost)タイ)文大統領、BangkokPostで日本批判、アセアンに協力を求める(2019年8月31日)
https://pattayaja.com/2019/08/31/6094/

2019年9月4日、日本の河野外相はアメリカの世界最大の配信規模を持つブルームバーグに寄稿し、日韓問題についての日本側の説明を掲載しました。この寄稿文は昨日の9月5日にタイの大手英字メディアで文大統領が日本批判を行ったBangkokPostにも掲載され、注目を集めています。

実際に掲載された寄稿文は以下のものです。

河野太郎外相
写真:外務省(日本)

Bloomberg)The Real Issue Between Japan and Korea Is Trust(2019年9月3日)
Bloomberg)日韓の本当の問題は、信頼関係にある
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-09-03/japan-south-korea-trade-spat-boils-down-to-trust

河野外相は寄稿文で、日韓で問題とされている”徴用工問題”について説明をし、これは1965年の日韓請求権協定で解決済みの論点である事を説明。その経緯としても、当時日本政府は個人に対する支払いについても提案したにもかかわらず、韓国政府側が国として請求した上で日本から受領した資金の分配は韓国政府の責任で行うと明言したことから、このように解決したものである点を指摘しました。

その上で、このような経緯で国際法上も解決済みの問題について、50年以上もたってから韓国政府側が突然に覆し引き起こしているのが本問題であり、国家間の国際的な合意が一国の国内事情により覆されるのでは、安定した国際関係を維持する事はできなくなることから、国際法上も国家間の関係においても認められない要求を韓国政府が行っているのが本問題である事を説明しました。

また本問題に対する対応において、日本政府は何度も韓国政府との外交上の協議を求め、1965年の協定に定められた仲裁の付託を通告しましたが、韓国政府が同意しなかったことで、今日の問題に至っている交渉経緯も説明しています。

他に、日韓の輸出管理は全く関係の無い問題である事、韓国政府が日本とのGSOMIAの破棄をした事については、全く別次元の問題であり、東アジアの安全保障に脅威をもたらしうるものである事を指摘しています。

(本寄稿は、本記事末に全文の日本語版を掲載しています。)

この河野外相の主張は、先に韓国の文大統領がBangkokPostに寄せた主張に対しての強烈な反論となっています。

韓国の文大統領は、日本が徴用工問題を引き起こした、同問題に応じてこなかった、韓国は話し合いの準備をして待っているという主張をしてきましたが、まずこれについて客観的事実を元に経緯を説明し、交渉に応じてこなかったのは韓国政府である点を説明し反論しています。

同様に韓国の文大統領が主張する「日本の輸出管理は、徴用工問題への経済的な報復だ」とする主張にも反論し、加えて韓国のGSOMIAについても安全保障上、誤ったものである点を指摘しています。

筆者は別に河野外相を無理に支持しているわけでもないですし、今の自民党を支持しているわけでもありません。
その筆者でも、この反論については客観的事実を元に非常に的確なポイントを指摘した反論がなされており、見事な反論だと思います。

確かに、河野外相の寄稿の表題にある通り、根本的な問題は国としての信頼の問題です。

タイの知識人層からも反響

タイでもBangkokPostに本寄稿が掲載された事を受けて、知識人層からは反響が起きています。

ここで少し説明を加えますが、タイの世論は知識人層と一般の大衆では、全く異なるものです。
タイは格差社会であり、教育においても格差が大きいのです。
そのためタイで、英字メディアのBangkokPostに掲載された英文記事を読んでいて反響が起きるのは、相当に高いレベルの知識人層の話であって、タイの一般的な人になると、そもそもこの問題が存在する事そのものを知らない方が多数派でしょう。
しかしながら、数は少数であっても、知識人層の意見は社会においての影響力が非常に大きいため、ここからの反響は非常に重要なものとなります。

そして昨日掲載された本記事について、タイの知識人層と呼べる知り合い数人に話を聞いてみた所、そもそもこういう経緯だったのかという驚きの声が多く聞かれました。

話を聞いてみると、その数人も、もともと日韓の徴用工問題について詳しいわけでもありませんし、別に興味があったわけでもありません。そんな折に韓国側の主張のみを先に聞いて、日本が韓国の戦争被害者に痛めつけるような酷い対応をしたり、韓国政府に嫌がらせでもしているものかぐらいに思っていたそうです。

それが、この日本側の事実経緯を読むと、これが本当なら、実際には韓国政府があまりにも無茶苦茶な要求を日本に行っているんじゃないの?という印象となり、ちょっと驚いたという反応でした。

一方で、韓国側からも反発の反響が上がってきています。

以下は韓国の大手メディア「中央日報」の昨日の9月5日の記事です。

中央日報)交替説の河野外相、2日続けて英文寄稿文で世論戦…韓国外交部「一方的主張」と反論(2019年9月5日)
https://japanese.joins.com/article/321/257321.html

韓国外交部は5日、河野外相の寄稿文に対し「韓国政府は強制徴用被害者問題、日本の輸出規制問題、GSOMIA終了決定などに対する日本の一方的な主張を受け入れることはできない。韓国政府は韓日請求権協定を順守しており、大法院の判断を尊重する」と反論した。

続けて外交部は「日本の輸出規制措置は強制徴用問題に対する報復措置であることを日本側の主要人物も公然と主張していた。日本が不当な経済報復を即刻撤回することを促す」と明らかにした。 

日本の主張が一方的だという内容なんですが、そもそも主張というのは自身が言いたい事を言う以上、そりゃぁ一方的なものです。韓国政府は韓日請求権協定を順守しているとも主張しているのですが、それなら、具体的に順守していると言える内容を主張をしなければいけません。しかし、その中身は何ら言及もされていません。
他は、日本の輸出規制措置は徴用工問題に対する報復だという点の主張ぐらいです。

これでは本問題の事実経緯や論点についての具体的な反論もなく、これじゃぁ反論と呼べるものではありません。
この後に、もう少し待ったら韓国政府側からは何か主張が出てくるのかもしれませんから、それは少し今後の動きや主張を見てみたいと思います。

日本の主張を海外世論に伝える取り組み

前回記事で紹介した通り、韓国の文大統領が8月30日にタイのBangkokPostに主張を掲載した時は、日本側が反論しなければ、日本の誤解がまた広まってしまうという不安がありました。
しかし今回の河野外相の寄稿文の掲載と反響により、日本の主張も同様に掲載され、知識人層には日本の主張への理解と反響が起きつつあります。

日本の誤解の蔓延を止めて日本の主張を伝えるための取り組みを、タイのBangkokPostでも見れた事は、筆者としてもとても嬉しく思いますし、河野外相と外務省の本取り組みを応援しています。

今後も日本としては、海外に広められている誤解を止め、日本の主張をしっかりと各国へ伝える取り組みを継続的に行う事が、より重要となっています。

河野外相の寄稿文は、日本語版の全文を以下に掲載します。

【寄稿】日韓間の真の問題は信頼-河野太郎外相
寄稿者:河野太郎

 日韓関係は現在、第2次世界大戦中の旧朝鮮半島出身労働者に関する問題により、厳しい状況にある。この問題の核心は、1965年に国交を正常化させることを決定した際に二つの主権国家の間で交わされた約束が守られるか否かということである。

 一部の人たちは、最近の日本の韓国に対する輸出管理の運用の見直しをこの旧朝鮮半島出身労働者問題と関連付けている。私は、これらの問題が完全に別個のものであると明言したい。

 1965年に日本と韓国は、14年にわたる困難な交渉をまとめ、日韓請求権協定を締結した。同協定の規定に基づき、日本は韓国に対し、無償および有償を合わせ計5億ドルの経済協力(当時の韓国の国家予算の1.6倍)を行い、両国およびその国民の間の財産・請求権に関する全ての問題が「完全かつ最終的に解決」されたことを確認した。

 交渉の際に提示された八項目の「韓国側の対日請求要綱」には、「被徴用韓人未収金」や「戦争による被徴用者の被害に対する補償」も含まれていた。日韓請求権協定の合意議事録では、「完全かつ最終的に解決」された財産・請求権のうちにこれら八項目に属する請求が全て含まれていることが明記されている。

 さらに、戦争中に日本企業によって「徴用」された韓国人労働者への補償を要求する中で、韓国政府関係者は、この要求には労働者の精神的、肉体的苦痛に対する補償も含まれているとの説明を行った。それに対し日本側からは、個人に対する支払いを提案したが、韓国側は、国として請求した上で、日本から受領(じゅりょう)した資金の分配は韓国政府の責任で行うと明言した。

 40年後、2005年8月に、韓国政府は、日本から無償資金協力として受け取った3億ドルには、「強制動員」に関する「苦痛を受けた歴史的被害」の補償も含まれていることを再確認している。それによって、韓国政府は、受領した無償資金のうちの適切な金額をそのような被害者の救済に使わなければならない道義的責任を有することを明確にした。

 その後、昨年、韓国の大法院は日本企業に対し、旧朝鮮半島出身労働者への慰謝料の支払いを命じる一連の判決を下した。これらの判決は明らかに1965年の協定に違反するものであった。しかしながら、韓国政府はこのような状況を是正するいかなる具体的な措置も講じてきていない。

 こうして、50年以上たって、韓国は両国政府間によって合意された約束を一方的に覆したのである。これがわれわれが直面する問題の本質である。もし国際的合意が一国の国内事情によって破られることが可能となれば、われわれは安定した国際関係を維持することは決してできないだろう。

 私は、韓国政府がこの問題について、国際法および国家間の関係の観点から対応し、国際社会の責任ある一員として具体的な措置を講ずることを強く望む。

 上記大法院の判決後、日本は累次にわたり韓国政府との間での外交上の協議を求め、1965年の協定に定められた仲裁の付託を通告した。しかしながら、韓国政府は同意しなかった。

 同じく重要な点として、私は、この問題が、兵器関連品目の不拡散を保障するために必要であった、最近の日本による輸出管理の運用の見直しとは全く無関係であることを再度強調したい。この決定は、安全保障の観点からのみ行われたものである。

 今回の見直し対象となっている物資・技術は、軍用品への転用が可能であるため機微なものである。各国当局はこのような軍民両用の物資・技術の輸出を適切に管理する責任がある。

 2004年以来、日本は韓国に対するこれらの品目の輸出につき、他のアジア諸国を含む大半の国および地域に適用するルールと比べて、簡素化した手続きを適用してきた。この手続きは、継続的な対話を通じて醸成される両国政府間の十分な信頼を前提としたものであった。

 過去3年間、日本側からの累次の申し入れにもかかわらず、そのような対話は開催されなかった。その間、韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した。このため、日本は韓国に対する輸出に適用していた簡素化された手続きをこれ以上維持できないと判断した。

 この決定は、いかなる意味においても、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する「報復」でも「対抗措置」でもない。このように関連付けることは、二つの全く異なる問題の根本的原因を曖昧にするだけである。

 日本は、国際法にのっとって、国際社会の責任ある一員として行動してきている。われわれは、引き続き前向きな2国間関係を構築していくためにも、韓国も同様に行動することを望む。

 最後に、この機会に、「秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」(GSOMIA)を終了させるとの韓国政府による最近の決定について述べておきたい。

 同協定は、2016年以降、日韓間の安全保障協力を強化し、地域の平和と安定に寄与してきた。韓国による同協定の終了決定は、同国が北東アジアの安全保障環境を完全に見誤っていることを示していると言わねばならない。

 韓国政府は、同政府による協定終了の決定は日本による韓国向け輸出管理の運用見直しと関連していると説明しているが、両者は全く次元の異なる問題であり、関連付けられるべきではない。

参考過去記事<連載:誤解が広がる日本>)

PJA NEWS)誤解が広がる日本(1)タイ現地メディア、韓国側主張のみを垂れ流す(2019年2月17日)
https://pattayaja.com/2019/02/17/%E8%AA%A4%E8%A7%A3%E3%81%8C%E5%

PJA NEWS)誤解が広がる日本(2) 韓国の”徴用工問題”、ねつ造の写真や像が世界中に拡散 (2019年4月7日)
https://pattayaja.com/2019/04/07/3822/

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