2019年10月29日 PJA NEWS)

追悼)日本人初の国連難民高等弁務官、緒方貞子さん死去

日本人として初めてUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の高等弁務官を務めた緒方貞子さんが今月22日に亡くなられ、本日の2019年10月29日、日本の東京都内の教会で葬儀が執り行われました。享年92歳でした。

(写真:国連UNHCR協会)

緒方貞子さんは、日本人の中でも世界で最も尊敬されている人の1人だと思います。
PJA NEWSでも、人道支援に大きな貢献をされた緒方貞子さんのお言葉などをご紹介してきました。

心より御冥福をお祈り申し上げます。

緒方貞子さんは、多数の名言を残されました。
その多くは、今の日本人が思い出さなければいけない言葉です。
以下に、筆者が特に印象深く思っている言葉を記載します。

「自分の国だけの平和はありえない。
世界はつながっているのだから」

「日本では難民を「助けてあげる」という発想ですが、それは違う。
自分の手に負えない原因で不幸な境遇に置かれているのだから、難民の人権は絶対に尊重しなければならない。
それは近代国家の義務ではないですか。」

また、以下にPJA NEWSで、今年の1月に緒方貞子さんが、アルフレッド・マーシャルの言葉を取り上げた話を引用した記事を再掲します。

PJA NEWS)サウジ女性、カナダ首相が受け入れ表明 カナダへ(2019年1月12日)
https://pattayaja.com/2019/01/12/2137/

このようなカナダ、オーストラリア、そして各国の難民保護の対応を見ていて、日本人として初めて国連難民高等弁務官となった緒方貞子さん(*1)が語ったという言葉を思い出しました。

熱い心と、冷たい頭を持て

(アルフレッド・マーシャル(*2) 1885年、ケンブリッジ大学経済学教授の就任講演より)

「難民の保護においては「冷静な思考力」も大切だが、それだけではあまりにも冷酷な人間となってしまう。

だからこそ「熱い心」を持たなければいけない」そのように、緒方貞子さんは説いたといいます。

この「熱い心」が、人を動かし、難民という本当に助けが必要な人を助ける事ができる、そんな事を思い出させてくれる、カナダやオーストラリアの対応です。

(*1)緒方貞子
1927年9月16日~、日本の国際政治学者。日本人として初の国連難民高等弁務官を務めるなど、国連での活動でも大いに活躍されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%92%E6%96%B9%E8%B2%9E%E5%AD%90

(*2)アルフレッド・マーシャル
19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの経済学者。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB

アルフレッド・マーシャルは新古典派経済学の第一人者で、イギリスのケンブリッジ大学にケンブリッジ学派を構成した学者です。
「経済学原理」(1890年)などが有名で、「マーシャルのk」など、その先進的な経済理論でも卓越しており、経済理論の分野での偉人として有名なのですが、同時に人間性も豊であったらしく、筆者としてはとても興味深い歴史上の人物の一人です。

元々マーシャルは、ロンドンの貧民街で暮らす階級社会における最下層の人々の惨状を目の当たりにし、この貧民を助けなければいけないという使命感を感じて、経済学に転向して経済学者として大成するに至ったと言われています。

そのためマーシャルの経済理論は、結果的に労働者の賃金を上げる、もしくは過酷な労働を和らげることを目標としていました。
そして、理論が現実から乖離すれば、それは「単なる暇つぶし」にすぎないとし、現実の問題が理論上の問題と混合されないように警鐘を鳴らしていたといいます。

上記のマーシャルの言葉の原文は”Cool Head,but Warm Heart.”で、これを冷たい頭と、熱い心を持てと訳したものです。
この言葉はケンブリッジ大学の就任公演でも語られていますが、マーシャルは実際にはこの言葉を何度も語っていたらしく、ロンドンの貧民街にケンブリッジ大学の学生たちを連れて行き、そこでこの言葉を語ったという記録も残っています。
「経済理論を学ぶ為には、理論的で冷静な頭脳も勿論必要だが、この貧民街の多くの人々の生活をなんとかしたいという、熱い心も大切なのだ」という事を、学生たちに伝えようとしたのではないでしょうか。

日本で初めての国連難民高等弁務官も務められた緒方貞子さんがこの言葉を引用したのは、このマーシャルが学生たちに伝えようとした姿勢だったのではないかと、筆者は思います。

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