PJA NEWS)睡眠時に硫酸をかけられた女性、病院で治療されず死亡。社会問題に(バンコク)

PJA NEWS)　2018年11月23日

睡眠時に硫酸をかけられた女性、病院で治療されず死亡。社会問題に(バンコク)

タイメディアで報道されている凄惨な事件が、タイの社会問題となってきました。

元々の事件は、以下の現地メディア記事などに多数報じられています。

以下に日本語での事件概要を記載します。

Kaosod)Woman dies after hospital refuses to treat acid attack by husband　(2018年11月11日)
カオソッド英文版)夫に硫酸をかけられた女性、病院が治療拒絶後に死亡
http://www.khaosodenglish.com/news/crimecourtscalamity/calamity/2018/11/11/woman-dies-after-hospital-refuses-to-treat-acid-attack-by-husband/

現地メディアによると、タイのバンコクで今月初旬の11月10日(土)の早朝、38歳のタイ人女性が自宅で睡眠中に、夫のタイ人から嫉妬され、顔に硫酸をかけられる事件が発生しました。

女性は12歳の娘とともに、急いで近所にあった大型病院のPharam2病院を訪れました。病院に到着したのは午前5時頃でしたが、病院側は医師や治療スタッフの不在を理由に治療を拒否し、看護師は女性に、他の病院であるBangmod病院に行くように言いました。

被害者女性の12歳の娘は、看護師に膝をついてまで治療をしてほしいと懇願しましたが、看護師は断り、別病院への交通費として40バーツを渡したのみでした。

やむなく被害女性は12歳の娘とBangmod病院へ行こうとしましたが、病院に到着する前に女性は亡くなってしまいました。

被害女性のChorladdaさんの葬儀
写真：Pattaya One
https://pattayaone.news/en/hospital-says-acid-burn-victim/

事件を受け、タイ警察は死亡した翌日の11月11日(日)に硫酸をかけた夫をナコンサワンで逮捕しています。

この事件がタイ現地メディアで大きく報じられると、バンコクのPharam2病院の対応にタイ世論の批判が強くなっており、多くのタイメディアがその後の推移の続報を報じています。

タイメディアNationも、以下のように続報のニュースを伝えています。

Nation)Medical Chiefs discuss compensation over acid death　(2018年11月22日)
Nation)硫酸死亡事件へ、SSO(社会保険局)が賠償を協議
http://www.nationmultimedia.com/detail/national/30359101

現地メディアの各報道によると、病院を監督するタイの当局であるHSSDは事件について、大型病院には24時間体制で治療をできるようにする法的義務があるにも関わらず、これを怠ったことなどが違法である点を指摘して対応を進めており、SSO(社会保険庁)は最大40万バーツの賠償金の協議を行うなど、関係する政府側での対応が進んでいる事がタイメディアで伝えられています。

また、タイの世論ではインターネットのSNSなどでも膨大なコメントが集まっており、病院が謝罪すらしないとは余りにも酷いという趣旨のコメントなどが寄せられています

このように、非常に凄惨な事件です。

タイでの一連の報道と当局の動きを外国人として見ていると、強く感じる印象のうちの一つに、タイの社会では一般市民を保護する為の法的な制度や仕組みが、あまりにも未成熟である点があります。

タイの場合は、タイの仏教的思想などによる弱者救済というのは存在するのですが、これは法的な整備や司法制度とはつながっておらず、法的には保護されない仕組みになってしまっている法的な欠陥というべき箇所が実に多くあるのです。

今回の事件は報道がセンセーショナルであり、タイ世論が大きく動いているために救済を求める声が大きくなっていますが、このように大きな反響を得る事件というのはわずかにすぎません。逆に言えば、大部分の事件は救済もされていません。

このような現実は、個人だけでなく法人も同様です。

日本とタイで協力して進めているEEC開発計画などで、タイ政府も海外からの投資を呼び込んでいる現在、タイとしては海外の投資家も安心して投資し正当な取引ができるよう、国際標準から見て未成熟な司法制度を、早急に進化させ対応していく取り組みが必要だと感じます。

余談ですが、タイの各法制度を見ると、日本の法律に似ていると感じる箇所があります。

これは、タイでは過去に日本の法制度を参考に作った法律が複数あるためで、日本と同様の法の欠陥が表出しているところもあり、大変興味深い内容となっています。

ご興味がある方は是非、調べてみてください。