2019年1月12日 PJA NEWS)

サウジ女性、カナダ首相が受け入れ表明 カナダへ

昨日、PJA NEWSでお伝えした以下のバンコクで拘束されていたサウジ女性問題について続報です。

PJA NEWS過去記事)サウジ女性問題 豪の会見で、バーレーンサッカー選手問題にも展開  (2019年1月11日)
https://pattayaja.com/2019/01/11/pja-news%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%82%b8%e5%a5%b3%e6%80%a7%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%80%e8%b1%aa%e3%81%ae%e4%bc%9a%e8%a6%8b%e3%81%a7%e3%80%81%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%83%83/

カナダのトルドー首相は現地時間の1月11日、サウジ女性を難民として受け入れる事を表明しました。

トルドー首相は会見で「カナダは人権や女性の権利を擁護する大切さを理解しており、国連の要請を受け入れました。」と述べて、難民としての受け入れを表明しました。

難民としての受け入れを巡ってはCNNの報道によると、昨日の1月11日にCNNの取材を受けてタイのイミグレーションポリスのトップが、カナダとオーストラリアが難民としての受け入れを表明したとして発表されていましたが、その直後に発表が取り消されていました。さらに同日にサウジ女性のツイッターアカウントも削除された事もあり、情報が錯綜していました。

その中で、カナダ政府はトルドー首相が会見をして受け入れを表明した事で、サウジ女性もカナダに行く事を希望し、11日夜の便で韓国経由でカナダへ出発しました。現地時間の12日朝に、サウジ女性はカナダのトロントへ到着の予定です。

この経緯については、以下の今日のCNN日本語版などが報じています。

CNN日本語版)家族から逃れたサウジ女性、カナダが亡命受け入れ (2019年1月12日)
https://www.cnn.co.jp/world/35131206.html


(カナダのトルドー首相
写真:2018年のブエノスアイレスでのG20にて、カナダ首相府より)

また、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のグランディ高等弁務官は声明を出し、「本件は国際難民法と人道という、最優先の価値観が勝った」と述べて、国連がサウジ女性を保護してからわずか4日で、安全な第三国での受け入れに至った成果を強調しました。

カナダ政府は、昨年の2018年10月20日、在トルコ総領事館内でジャーナリストのジャマル・カショギ氏を殺害した事件でもサウジアラビア政府を厳しく批判してきた経緯があり、今回のサウジ女性の難民受け入れも、カナダはオーストラリアと同様に、国が極めて迅速に対応しました。

一方でこのサウジ女性は昨日、イスラム教を捨てた事で多数のイスラム教徒から脅迫されているとして、ツイッターアカウントを削除した事をあかしており、今だ保護が必要な状況が続いています。

 

このようにして、女性はタイを離れてカナダのトロントに行く事となりました。女性が安全で幸せな人生を送ってくれるようになることを願います。

今回の一連の騒動で、難民受け入れを求めたサウジ女性の保護に迅速な対応を行ったカナダ政府、オーストラリア政府は、国際的評価を非常に高める事となりました。カナダは国のトップである首相が会見を開いてまで対応しており、この二国の積極的な人道的支援と保護の対応は、他国と比べて卓越しています。

このようなカナダ、オーストラリア、そして各国の難民保護の対応を見ていて、日本人として初めて国連難民高等弁務官となった緒方貞子さん(*1)が語ったという言葉を思い出しました。

熱い心と、冷たい頭を持て

(アルフレッド・マーシャル(*2) 1885年、ケンブリッジ大学経済学教授の就任講演より)

「難民の保護においては「冷静な思考力」も大切だが、それだけではあまりにも冷酷な人間となってしまう。

だからこそ「熱い心」を持たなければいけない」そのように、緒方貞子さんは説いたといいます。

この「熱い心」が、人を動かし、難民という本当に助けが必要な人を助ける事ができる、そんな事を思い出させてくれる、カナダやオーストラリアの対応です。

(*1)緒方貞子
1927年9月16日~、日本の国際政治学者。日本人として初の国連難民高等弁務官を務めるなど、国連での活動でも大いに活躍されています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%92%E6%96%B9%E8%B2%9E%E5%AD%90

(*2)アルフレッド・マーシャル
19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの経済学者。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB

アルフレッド・マーシャルは新古典派経済学の第一人者で、イギリスのケンブリッジ大学にケンブリッジ学派を構成した学者です。
「経済学原理」(1890年)などが有名で、「マーシャルのk」など、その先進的な経済理論でも卓越しており、経済理論の分野での偉人として有名なのですが、同時に人間性も豊であったらしく、筆者としてはとても興味深い歴史上の人物の一人です。

元々マーシャルは、ロンドンの貧民街で暮らす階級社会における最下層の人々の惨状を目の当たりにし、この貧民を助けなければいけないという使命感を感じて、経済学に転向して経済学者として大成するに至ったと言われています。

そのためマーシャルの経済理論は、結果的に労働者の賃金を上げる、もしくは過酷な労働を和らげることを目標としていました。
そして、理論が現実から乖離すれば、それは「単なる暇つぶし」にすぎないとし、現実の問題が理論上の問題と混合されないように警鐘を鳴らしていたといいます。

上記のマーシャルの言葉の原文は”Cool Head,but Warm Heart.”で、これを冷たい頭と、熱い心を持てと訳したものです。
この言葉はケンブリッジ大学の就任公演でも語られていますが、マーシャルは実際にはこの言葉を何度も語っていたらしく、ロンドンの貧民街にケンブリッジ大学の学生たちを連れて行き、そこでこの言葉を語ったという記録も残っています。
「経済理論を学ぶ為には、理論的で冷静な頭脳も勿論必要だが、この貧民街の多くの人々の生活をなんとかしたいという、熱い心も大切なのだ」という事を、学生たちに伝えようとしたのではないでしょうか。

日本で初めての国連難民高等弁務官も務められた緒方貞子さんがこの言葉を引用したのは、このマーシャルが学生たちに伝えようとした姿勢だったのではないかと、筆者は思います。

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