日本の法務省で、タイ検事総長府幹部が講演
昨日の2019年1月25日、日本の法務省で行われた「ジェンダー差別に根差す犯罪」と題した講演会で、タイ検事総長府の次長検事秘書官補が講演をしました。
以下のJNNニュースが伝えています。
JNN<TBS系>)タイの検事秘書官補、法務省で講演 (2019年1月25日)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3583242.html
上記ニュースから引用します。
タイ検事総長府の検事秘書官補が、法務省で行われた「ジェンダー差別に根差す犯罪」と題した講演会で、「女性のプライバシーや個人情報を守るプロセスが今後の刑事司法には必要だ」と訴えました。
この講演会は各国の刑事政策への理解を深め問題点を共有するために、「日本刑事政策研究会」などの共催で毎年開かれていて、海外から招かれた専門家などが参加しています。
25日はタイ検事総長府の次長検事秘書官補、サンタニー・ディトサヤブットさんが「ジェンダー差別に根差す犯罪」と題して講演しました。サンタニーさんによると、2017年にタイで起きた暴力事件およそ2万1000件のうち、女性の被害が94%を占めていて、このうち、半数以上が配偶者や交際相手からの暴力だということです。
サンタニーさんは「タイでは女性が被害に遭っても、警察官が個人の問題や家族の問題として捉え、訴追しない傾向がある」と指摘。「被害女性のプライバシーや個人情報を守るプロセスが今後の刑事司法には必要だ」と訴えました。
(写真はイメージ Photo by Marcos Luiz Photograph on Unsplash)
タイの現地感覚においても、確かにタイの女性への暴力事件が頻発しているというのはわかります。その現地の感覚を持ってしても、2017年のタイの暴力事件の約2万1千件のうち、じつに94%のほとんどの被害者が女性というのは、驚かされるほどの高い数字です。
ニュースで指摘されている通り、タイで現場レベルで見ていると、タイの警察や検察は家庭内での暴力などを事件化する事に非常に消極的であるという面があります。それでも立件された数で94%ということは、実際の事件は発表よりも遥かに多いのは容易に察せられます。
加えて講演で指摘されているように、タイの刑事裁判においては、被害者女性のプライバシーや個人情報を守るプロセスも乏しいのが現状です。
日本では先月も、タイの女性が元夫のストーカーから顔面に硫酸をかけられて、さらに病院で治療もされずに死亡した事件が話題となっていたばかり。女性という弱い立場の人が十分に保護されず、さらに病院から治療もされない社会状況にある事が話題となっていました。
Tablo)ストーカーから顔面に硫酸をかけられた女性!病院で治療もされず死亡 お金がなかったから? (2018年12月25日)
http://tablo.jp/case/society/news004297.html
このようなタイの刑事司法における現状の問題点が、タイの検事総長府の幹部から直接本講演で説明を聞けたことで、日本の法務省の方々にも参考になったのではないでしょうか。
一方で日本の刑事司法は、国連でも「中世レベル」と呼ばれ(*)批判を受けている状況にあり、性犯罪被害での裁判所の被害者へのプライバシーへの配慮なんてお世辞にも十分とは言えない状況にありますから、日タイ両国とも参考になる問題点を共有して理解を深め、一助となるといいですね。
(*)国連で日本の刑事司法が「中世並み」と批判された以下の発言
弁護人に取調べの立会がない。そのような制度だと真実でないことを真実にして、公的記録に残るのではないか。弁護人の立会が(取調べに)干渉するというのは説得力がない。これは司法制度の透明性の問題である。ここで誤った自白等が行われるのではないか。有罪判決と無罪判決の比率が10対1(注記:この数値は間違い。実際には日本の刑事司法の無罪判決の割合は当時で1%にも満たない)になっている。自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残である。こういった制度から離れていくべきである。日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある。
(2013年5月22日 ジュネーブの国連拷問禁止委員会で、第二回日本政府報告書審査の際のモーリシャス(アフリカ)のDomah委員(元判事)のコメント)
これに対し、日本の上田秀明人権人道大使が「日本は決して中世時代などではない。この(刑事司法の)分野では、最も進んだ国の1つだ。」と発言。これに対しては会場から苦笑が溢れたところ、上田は「笑うんじゃない!なんで笑うんだ?黙れ!黙れ!」と大声で叫んだ。この上田の対応には会場全体が驚き、静まりかえった。すると上田はさらに「この(司法の)分野で進んだ国の1つであることは、日本の誇りだ。」と発言した。
なお、上記の上田が叫んで発言した「笑うんじゃない!なんで笑うんだ?黙れ!黙れ!」の部分は、記録によると原文では英語で「Don’t laugh! Why you are laughing? Shut up! Shut up!」と発言している。
この”Shut up!”という上田の表現は、英語としては相当に下品に強く「てめえ黙りやがれ!」という風に叫んだ印象を与える表現であり、上田の英語の発音も非常に下手な事を考えると、上田はそのニュアンスを正しく理解せずに叫んだのかもしれないと言われている。
この後に国連拷問禁止委員会は日本に代用監獄、自白強要、独房への監禁、死刑、軍用性的奴隷などの問題を指摘して勧告を実施した。また、日本の外務省は上田に口頭での注意を行った。
<上田英明 (以下Wikipediaより引用)>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E7%94%B0%E7%A7%80%E6%98%8E
1944年(昭和19年)新潟県生まれ。1967年(昭和42年)に東京大学を卒業し、外務省に入省。外務省内ではロシア語研修閥の「ロシアン・スクール」に属しており、在ソ連大使館一等書記官・同参事官、欧亜局東欧課長などを歴任した。
1995年(平成7年)には日本初開催となるAPEC大阪会議の準備事務局長に任命される。だが後に事務局次長ら数人が会場費を約4300万円分水増しして請求し、ホテルの宿泊費や上田も出席した打ち上げの費用などに流用していたことが発覚。上田は打ち上げ費用の出所について認識が明確でなかったと主張したが、直属の上司としての監督責任を問われ、2001年(平成13年)9月27日付で田中眞紀子外務大臣から厳重訓戒処分を受けた。また給与の2割・3か月分を自主返納し、打ち上げに流用された費用について弁済にあたる意向を示した。
その後はポーランドやオーストラリアで特命全権大使を務めていたが、第1次安倍内閣が拉致問題や慰安婦問題に関する日本の国際的立場を高めるべく、人権人道担当大使のポスト(2005年に設置された人権担当大使の後継ポスト)を設置すると、国際社会協力部長時代に人権分野を扱っていた経緯もあって、2008年(平成20年)4月付で人権人道担当大使に任命されることになった。
一方、政治学者であり「救う会」の副会長として拉致被害者救出活動に携わっている福井県立大学の島田洋一教授は、2012年(平成24年)6月に行われた拉致問題専門家懇談会に出席した政府側・民間側の委員全員が上田が大使であることを知らなかったとした上で、上田は情報発信力に乏しく人権人道担当大使のポストには不適任であると批判している。
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