新未来党への聴取に西側外交官多数、タイ外相が批判し国際問題化(動画付き)
以下記事の、タイの新興政党である「新しい未来党」のタナトン党首が、タイ警察から召喚状を受けたニュースに続報です。
西側各国も加わって、大きな国際的な動きになってきています。
PJAニュース)新未来党の党首、タイ警察から召喚状 (2019年4月4日)
https://pattayaja.com/2019/04/04/%e6%96%b0%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e5%85%9a%e3%81%ae%e5%85%9a%e9%a6%96%e3%80%81%e3%82%bf%e3%82%a4%e8%ad%a6%e5%af%9f%e3%81%8b%e3%82%89%e5%8f%ac%e5%96%9a%e7%8a%b6/
2019年4月6日、新しい未来党のタナトン党首は召喚状に応じ、バンコクのパトゥムワン警察署を訪れました。
これについてはタイ大手英字メディアのBangkok Postが同日の夜に、次のように伝えています。
Bangkok Post)Thanathorn faces three more charges(2019年4月6日)
Bangkok Post)タナトン党首、3容疑に直面
https://www.bangkokpost.com/news/politics/1657608
(2019年4月6日 パトゥムワン警察署を訪れたタナトン党首と支援者
写真:新しい未来党タナトン党首Facebookより)
現在、タナトン党首はタイ警察より扇動罪(タイ刑法第116条)、逃亡在(同第189条)、及び10人以上の集会で社会的な不安を起こした罪の容疑がかけられています。これについて有罪判決を受けた場合、それぞれ最大7年、2年および6ヶ月の懲役刑となる可能性があります。
これら容疑についてタナトン党首は否定しており、2019年5月15日に書面で見解を提出するとしています。
タナトン党首がパトゥムワン警察署を訪れた際、現場には多数の支援者と、本件の調査に訪れた西側各国の外交官やその代理、国連の職員が訪れていました。
以下は、実際の動画や写真です。
タイ大手メディアMatichon WeeklyのFacebook動画
Live : "ธนาธร จึงรุ่งเรืองกิจ" หัวหน้าพรรคอนาคตใหม่ เข้าพบพนักงานสอบสวน สน.ปทุมวัน ความผิดคดีความมั่นคง มาตรา 116 ตามหมายเรียก
Matichon Weekly – มติชนสุดสัปดาห์さんの投稿 2019年4月5日金曜日
動画にも一部写っていますが、西側各国としてアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ、ベルギー、フィンランド、オランダの外交官もしくはその代理が、パトゥムワン警察署を訪れていました。また、EUと国連の人権担当官も状況を見に訪れていました。
これに対しタナトン党首は、各国の外交官や国際機関への御礼をタイメディアを通して語りました。
この西側各国の外交官が訪れた事について2019年4月9日(火)、タイのDon Pramudwinai外相はタナトン党首側に偏った対応であり、「タイへの内政干渉である」として非難していました。
そして4月10日(水)の夜にはタイ語版のウェブサイトで、これを非難する声明を発表しました。
これについてはタイ大手英字メディアのBangkok Postが、昨日の4月11日に次のように伝えています。
Bangkok Post)Envoys rebuked, accused of siding with Thanathorn (2019年4月11日)
Bangkok Post)外交使節など、タナトン党首側に偏った対応と批判される。
https://www.bangkokpost.com/news/politics/1660140/envoys-rebuked-accused-of-siding-with-thanathorn
報道によると、この声明はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、ベルギー、フィンランド、オランダ、ニュージーランド、欧州連合に対して、タナトン党首がパトゥムワン警察署に召喚された際に参加していた事について、失望と懸念を表しました。
声明は「本行為は外交官の役割を逸脱しており、タイへの内政干渉と同等である。これは1961年のウィーン条約第41条に基づく外交議定書にも違反している」と述べて西側各国を批判し、その上でタイ外務省の副次官補は、対象となる各国の外交官に、事件の再発防止のための行動を求めました。
これを受けて、西側各国の外交官も反応し、このタイ外相からの非難を否定しています。この反応はBangkok Postが昨日、次のように伝えています。
Bangkok Post)Western diplomats deny Thai accusation (2019年4月11日)
Bangkok Post)西側外交官たち、タイ政府の非難を否定
https://www.bangkokpost.com/news/politics/1660240/western-diplomats-deny-thai-accusation
報道によると、在タイ米国大使館のスポークスマンが、米国海軍大臣のピーター・ヘイモンド氏が4月10日の水曜日に、本件について外務省高官と会談した事を語りました。その上で、次のように電子メールでコメントをしています。
「米国大使館は、公正な裁判の保証を遵守し、法の支配を尊重するために、世界中の注目の訴訟を定期的に傍聴、調査しています。
この訴訟に対する米国政府の関心は、他の多くの訴訟と同様に、司法プロセスを遵守した訴訟手続きがされているのかを調査する為に、直接情報を入手することです。」
また、EUの使節団からもタイ政府への声明が出されました。
声明において、EUの使節団は次のように語っています。
「公聴会や裁判の監視は、世界的に標準とされる外交的慣行です。
その目的は、人権や司法における適正な手続などの国際司法の標準が遵守されているか、その理解を高めることにあります。
そのような監視は、決して当該国における政治的な選好や、特定の政党や個人に対する支持を示すものではありません。」
EUの声明においては、タイ警察に対して「観察を容易にし、外交官たちに説明することを申し出たことにおける」協力について、感謝を表しました。
報道されている概要は、上記の通りです。
タナトン党首へのタイ警察からの召喚や容疑は、西側諸国を巻き込んだ大きな騒動となってきています。
西側諸国の近代政府の基本概念として、司法権は政権から独立していなければならず、かつ司法における国際標準が守られなければなりません。
この司法の国際標準を確立するために、外交官が当該国の訴訟手続きを調査する事は、民主主義国家である西側諸国では通常の外交官の業務です。
日本は本件には全く関与していませんが、以下の過去記事の通り、日本も韓国政府に「徴用工問題」などという国際司法標準を逸脱した請求をされ、日本についての誤解が世界中に広がっており、日本も外務省などが中心となって反論をしなければいけない現状において、西側の国際社会にどう日本の主張を訴えるべきか、学ぶべきことが多い内容だとも思います。
PJAニュース)誤解が広がる日本(2) 韓国の”徴用工問題”、ねつ造の写真や像が世界中に拡散 (2019年4月7日)
https://pattayaja.com/2019/04/07/%e8%aa%a4%e8%a7%a3%e3%81%8c%e5%ba%83%e3%81%8c%e3%82%8b%e6%97%a5%e6%9c%ac2%e3%80%80%e9%9f%93%e5%9b%bd%e3%81%ae%e5%be%b4%e7%94%a8%e5%b7%a5%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%81%e3%81%ad/
先月に総選挙の投票を実施し、タイは民政復帰をしました。
タイに住む外国人としては、民主主義国家として少数派意見や反対派意見にも耳を傾け、国民の建設的な議論によって公共の利益を目指し、さらなる社会の安定や経済の繁栄を実現してくれる事を願っています。
「新憲法によって、わが国のいわゆる「民主政治」が確立されたが、現在の政治の形態がはたして当初に期待された如きものであるや否や。
真に民主政治が確立されるまでは、国民は深き注意をもって常に政治、政局の推移を監視せねばならぬ。」
(吉田茂 1878年9月22日~1967年10月20日 第45、48~51代内閣総理大臣)
Wikipedia) 吉田茂
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E8%8C%82
7月の参院選には、在外投票での投票を!
(PJAニュース特集 選挙に行こう!2019)
日本でも、今年の7月に参院選が予定されています。
現在、在タイ日本大使館や外務省も在外投票を呼び掛けていますが、その在外投票の投票率が第一回の記事の通り、実質2%未満にまで低下してしまっているのが、現在の日本の選挙の大きな問題の一つなのです。
これでは国民の意思を反映した政治が実現する事も出来なくなってしまっており、日本の民主主義の土台が揺らいでしまっています。
国民自身が、選挙の投票に行き、一人一人の意思を選挙で示す事が必要となっているのです。
7月の参院選は、改憲勢力が改憲を出来る勢力を得られるかどうかを左右する、重要なものです。また、6月のサミットの後に衆議院の解散があれば、衆参ダブル選挙となる可能性もあります。
その際にタイなど海外に在住の日本人の方は是非、7月に在外投票で投票できるように、以下の過去記事の通り、在外選挙人名簿への登録を今月の早いうちに、バンコクの在タイ日本国大使館や、バンコクでの手続きが無理でも、領事出張サービスなどを利用して、是非実施されて下さい。
タイなど海外に在住する日本人も、7月の参院選に投票しましょう!
「民主主義についてはろくに教えられず、投票権だけが与えられている状況は、私の心にずっと引っかかってきた。」
(ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク 1942年2月24日~)
インドのカルカッタの出身で、アメリカに渡り高名な理論家、文芸評論家となったガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク氏の言葉です。
この言葉を読むと、戦後の日本の民主主義に似ていると筆者は思います。
民主主義は、国民の”一般意思(*)”が国家経営に反映される事で、国民の為の政治がなされるという目的の為に、その仕組みとして有権者に投票権が与えられています。
しかし国民の側において、投票権を行使する事の重要性などを含めた民主主義政治への理解が出来ておらず、投票そのものをしなければ、民主主義の土台が崩れてしまいます。
そうならないためにも、国民の側でその意味を理解し、一人一人の意思を投票により表明する事が、今の日本に必要な事なのです。
Wikipedia)ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A4%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BBC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%AF
(*)「一般意思」
ジャン・ジャック・ルソーの1762年刊行「社会契約論」第2編第3章「一般意志は誤ることができるか」の以下文言の日本語訳より引用し表現しました。
「一般意思は、つねに正しく、つねに公の利益を目指す」
PJAニュース 特集:選挙に行こう2019 過去記事)
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