2019年5月31日 PJA NEWS)

三菱地所が”あの”レイモンランド社と共同事業、波紋が広がる

2019年5月28日、日本の不動産大手の三菱地所(東証一部上場8802、代表者 吉田淳一取締役兼代表執行役社長)が、タイのバンコクで、三菱地所グループとして初となるオフィス開発プロジェクトへ参画することを発表しました。

三菱地所による報道発表資料(ダウンロード用)
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発表された開発プロジェクトの共同事業先が、以下の記事の通りPJAでも捜査当局に取り締まりを要請し、タイの合同捜査本部により刑事事件化していただいた事件を、管理下で引き起こして話題となっている真っ最中の「あの」レイモンランド社(タイSET上場、代表者:ライオネル・リー)だったために、波紋を広げています。

PJAニュース過去記事)パタヤ 大型コンドUnixxで違法短期賃貸の大規模摘発 (2019年2月14日)
https://pattayaja.com/2019/02/09/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%A4-%E5%A4%A7%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89unixx%E3%81%A7%E9%81%95%E6%B3%95%E7%9F%AD%E6%9C%9F%E8%B3%83%E8%B2%B8%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E6%91%98%E7%99%BA/

2019年2月6日(水)の午後、パタヤ南部のサウスパタヤのプラトゥムナックにある高層タワー・コンドミニアムのUnixx South Pattaya(開発:Raimon Land Public Company Limited、代表者Lee Chye Cheng, Adrian、タイ証券取引所<SET>上場)で、タイの行政当局とタイ警察の合同捜査班によるコンドミニアムでの違法な短期賃貸の大規模な取り締まりが行われました。

同コンドミニアムでは、開発したRaimonland社が入口ロビーにSalesOfficeを開設し、これを2016年に同社経営陣が日系不動産会社に最優先利用権を約していましたが、同社は2018年にこの履行をせず問題となっていました。その後は同SalesOfficeにタイ法人のEzi Trip Stay Co.,Ltd.社が以下の看板を掲げ、コンドミニアムでの違法な短期賃貸を実施していました。

(中略)

この取り締まりにより、短期賃貸を行っていた上記のEzi Trip Stay Co.,Ltd.社と、Unixx在住の中国人女性のLilly氏が逮捕されました。

今後は法的手続きが見込まれていますが、捜査関係者によると上記のEzi Trip Stay Co.,Ltd.社の容疑は短期賃貸だけではなく、他の容疑の可能性もある模様です。また、本物件では違法賃貸を蔓延させていた管理事務所の責任も問題となっていますが、その管理事務所は昨年8月に居住者の家に不法侵入をし、パタヤ警察署で事件となっていたばかりでした。本事件については引き続き続報の予定です。

末筆になりますが、本件のように違法行為をしっかりと取り締まってくれているタイ当局の皆さまに感謝を申し上げます。

上記の事件は、レイモンランド社の管理の下で発生し刑事事件化もしていますが、この刑事事件の後の現在も問題は解決などされておらず、むしろこの後もさらなる問題が続いています。これを受けて現在、PJAニュースでも関係各局に取材と調査を進めています。

このレイモンランド社とは、日本の東京建物(東証一部8804、代表者:代表取締役 社長執行役員 野村 均)が、バンコクで個人向けに販売する住宅物件を共同事業で開発すると発表しています。このため、一般の人が「東京建物」の名前を信じて、レイモンランド社との共同事業の物件を買って大丈夫なのかと不安の声が広がっている最中にあります。

PJAニュース)バンコク:東京建物の報道対応が波紋 (2019年4月2日)
https://pattayaja.com/2019/04/02/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%AF%EF%BC%9A%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%BB%BA%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%A0%B1%E9%81%93%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%8C%E6%B3%A2%E7%B4%8B/

(バンコク:レイモンランド社と東京建物社の共同事業の広告
写真:PJAニュース(バンコク))

海外に進出する日本の不動産大手各社、その倫理観に懸念

日本の不動産業界の一般論として近年、世界的に主要国で量的緩和が進み、日本でも量的緩和が過度に進んでいる事により、日本の不動産価格は高騰を続けています。このように過度に高騰した不動産価格は崩壊の危険も常にあることから、日本の不動産デベロッパー大手各社はリスクを回避し、海外に資産を分散させる目的もあって、タイを含めて海外投資を積極的に行なおうとする動きが広がっています。

このためにタイにおいても、日本の大手不動産デベロッパー各社から「タイで当社初の〇〇を開発」などという発表などが多くなっており、デベロッパーとしては日本の株価を上げるために躍起になっているのですが、この日本企業大手の「初プロジェクト」では事前の調査なども非常に甘く、その後に問題となるケースも頻発しているのが実情です。

筆者はもともとアメリカの戦略コンサルティング会社の出身で、日本でコンサルティング会社を設立して経営していたので、日本の大手の不動産デベロッパーや商業施設デベロッパーの依頼も多く受けていました。
そのため、もともとこの業界の経営陣層とは繋がりも多いのですが、その経験においても、そもそも日本の大手デベロッパーの海外での開発案件の多くは、海外の取引先企業各社の実情の調査と把握も不十分な事がほとんどなのです。

出資する日本企業の多くは東証一部上場の企業ですから、その出資する資金は公開市場から調達されている、非常に公的な側面の高い資金です。だからこそ、その資金を多額に不動産投資として投資する際には、企業としても非常に高いレベルの注意義務が求められます。

そのために企業としては、公的な資金を渡す取引先に、暴力団の構成員や関係者が絡んだことがないか、体質としても、違法行為は勿論、現地の未整備な法の問題点を悪用するような、世論から批判を浴びる非倫理的な行為をするような体質となっていないか、その体質まで含めて詳細に調査してからでなければ、日本企業が投資し、さらに日本企業のブランド名を使わせる相手として適切かどうかは、判断ができません。ところが多くの日本の不動産開発企業の海外案件では、このような調査も不十分な事が極めて多いのです。

このように投資した先が、実際には暴力団構成員や暴力団関係者が絡んだ企業で、そこに投資して資金を提供していたという問題を起こすと、特に海外では、法的な属地である日本法やタイ法の問題だけではなくなります。

アメリカでは2011年7月、当時のオバマ大統領が国際的な組織犯罪への対策を強化する「国際的組織犯罪に対する戦略」を発表し、国境を越えた犯罪組織の撲滅を狙う大統領令を出しており、これを受けてアメリカの財務省は、暴力団関係と関わった会社には経済制裁を発動しています。当然ながら、この経済制裁はタイを含めたアメリカ国外での問題でも同様に発動され、この経済制裁を受けると、その企業や個人は、米国内の法人、個人との取引が禁止され、さらに米国内の資産も凍結されるという、非常に厳しい制裁を米国財務省から受けます。

昨年の2018年10月2日、アメリカの財務省がマネーロンダリングなどにかかわったとして、日本の指定暴力団山口組の幹部4人と関連の不動産会社2社を経済制裁の対象にすると発表しました。その発表の際にアメリカの財務省が出した声明文が、アメリカの財務省とアメリカ政府の姿勢を良く表しています。

「我々はヤクザが管理する企業に狙いを定め、合法的に見える企業の実際の所有権を明らかにしている。
性的搾取から武器密輸、ゆすりなどあらゆる犯罪で(利益を)得ている日本の危険な犯罪組織と幹部らに圧力を強める」

このような国際的な問題を扱う案件の際に、特に米国の当局担当官の方々の国際的な問題に対する意識の高さには、本当に敬服する思いがします。

このような各国の情勢の中で、海外に不動産投資という危険性の高い投資をする以上、日本の不動産デベロッパー各社は目先の株価や資産分散のメリットを追い求めるだけではなく、株主のためにも、その日本企業を信用してくれている多くの法人や個人のためにも、国際社会に貢献するためにも、高い倫理観が求められている事をしっかりと自覚しなければいけません。

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