2019年9月24日 PJA NEWS)

タイ高速鉄道)どうなるEEC路線!?10月15日の契約期限を通告

(写真は高速鉄道イメージ)

タイの高速鉄道のうち、バンコクのドンムアン空港、スワンナプーム空港と、ラヨーンにある空港の3空港を結びEECエリアを通る「EEC路線」に続報です。

このタイ高速鉄道の路線については以下の過去記事の通り、2019年4月25日に契約の方針を固め発表されていました。
この折は、
5月28日に内閣の承認を得るために草案が送られ、6月15日に契約ができる見込みとされていました。

PJA NEWS)タイ高速鉄道)EEC路線、CP率いるコンソーシアムが契約 (2019年4月27日)
https://pattayaja.com/2019/04/27/4153/

2019年4月25日(木)に14時間にわたる交渉の末、同日夜にタイ国鉄の総裁は、SRP(タイ国鉄)はEEC路線について、CPグループに建設の契約を結ぶ方針を固めた事を語りました。この契約の金額は2200憶バーツで、契約は2019年6月15日に締結の見込みです。

総裁によると、今後は5月15日までに契約書の草案を理事会にかけ、5月28日に内閣の承認を得るために草案が送られた後に、6月15日に契約できるようになる見込みです。

この後、5月28日に予定通りプラユット内閣により閣議決定が実施され、CPグループが正式受注の見込みと伝えられていました。

以下は、そのニュースを伝える日経新聞の記事です。

日経新聞)タイ首都圏高速鉄道、CPが閣議決定で正式受注 (2019年5月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45390400Y9A520C1FFE000/

タイ政府は28日、バンコク首都圏の3空港を結ぶ高速鉄道の建設計画を閣議決定した。タイ最大財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループを中心とする企業連合が正式に建設を受注した。6月中旬にもタイ国鉄と契約を結ぶ見通しだ。早期に建設に取りかかり、2024年の開通を目指す。

しかしこの後、契約の締結は遅れています。当初は6月15日と見込まれていた契約は実現しておらず、7月、8月も実現できませんでした。そして9月も、本日の24日の現時点で既に絶望的になっています。

このような状況の中で、タイ誇り党の党首で現在はプラユット内閣で副首相の1人となっているAnutin副首相は、10月15日までにCPグループに契約を締結するよう、最終通告を行った事を明かしました。この期限が守られなければ、CPグループには厳しい罰則を適用するとしています。

タイの大手英字メディアのBangkokPostが本日の2019年9月24日の朝、次のように伝えています。

BangkokPost)CP given airport link ultimatum (2019年9月24日)
BangkokPost)CPのコンソーシアム、高速鉄道空港路線に最終通告を受ける
https://www.bangkokpost.com/business/1756654/cp-given-airport-link-ultimatum

Anutin副首相(タイ誇り党:党首)
写真:タイ誇り党

今朝のBangkokPostの報道によると、入札を落札したCPグループには、2019年10月15日までに契約を締結するよう最終通告が実施されました。CPグループがこれを守らないと、厳しい罰則がCPグループに適用される見込みです。

最終通告の実施は昨日の2019年9月23日(月)、タイ運輸省を監督するAnutin副首相、運輸省大臣、運輸省高官、EEC局長で会合が行われ、決定されました。

Anutin副首相はコメントで「これまでに十分な時間を、落札したCP主導のコンソーシアムに与えて、現在の規制の下で可能な限りの良い条件を受け入れる事にSRT(タイ国鉄)や運輸省側も同意してきた。もうこれ以上、交渉の余地はない。」と語りました。

このタイ高速鉄道のEEC路線については、落札したCPグループのコンソーシアムは契約が遅れながらも、9月前半にも契約が締結されると見込まれていましたが、契約は実現していません。

CPグループ率いるコンソーシアム側は、契約が遅れている大きな理由の一つは、工事の為の土地の収用に懸念がある事だと語っています。

一方、Anutin副首相は、CPグループが率いるコンソーシアムが落札した入札価格で契約する条件は、2019年11月2日まで有効であり、これを超えると契約は出来なくなる為、最終の契約締結期限である10月15日を通告したことを述べています。

またAnutin副首相は、この10月15日の期限までにCPグループ率いるコンソーシアムが契約を締結しなかった場合、20憶バーツ相当の入札保証金は没収となり、CPグループが率いるコンソーシアムを構成する全ての企業はブラックリストに登録され、今後タイの国家プロジェクトへの入札は禁止される事。加えて、締結をしなかった事による損害賠償請求を行う意向を語り、落札したCPグループが契約を期限までに締結しない理由などないと強調しました。

タイ高速鉄道:EEC路線の予定図
タイEEC委員会資料より

Anutin副首相は、タイ高速鉄道の本路線は、政府のEEC計画において重要な要素であり、この高速鉄道が実現しなければ、EEC計画は実現しないと強調しました。

また、タイ政府は問題が起きても支援をする用意が出来ており、先週の2019年9月20日の経済大臣会議で、プラユット首相も本計画を加速するよう指示した事を語りました。

報道されている概要は上記の通りです。

EEC路線、JBIC(日本国際協力銀)も「まだ決定は何らされていない」

タイのEEC路線は、閣議決定がされた後もCPグループ側は契約の締結に難色を示しており、先行きは不透明な状況が続いています。

今朝報道された通り、重い罰則をつけた最終期限をタイ政府が打ち出した事で、前に進むのでしょうか?

報道された、CPグループが懸念しているタイ国内の鉄道関連用地の収用については、土地からの立ち退きなどで影響を受ける反対派住民がバンコクの官庁街や国会議事堂にほど近い民主記念塔などで政治集会を繰り返しており、その収束の目途はたっていません。

また、今月にはタイの下院で「タイ東部高速鉄道の導入調査のための特別委員会」の設置要請が、反対票が多く否決されました。その理由は、都市計画が国際基準を満たしておらず、観光都市への自然環境に悪影響を与えかねないからというものでした。

さらに、この高速鉄道の投資資金についても疑問が残ります。

同路線についての資金について、タイ政府は以下の過去記事の通り、3月7日に日本のJBIC(日本国際協力銀行)と協議し、JBICからの融資で実現する事を検討しています。

PJA NEWS)タイ高速鉄道:日本の国際協力銀行、EEC路線を支援検討(2019年3月10日)
https://pattayaja.com/2019/03/10/3224/

3月7日の協議には、タイ政府側はプラユット首相、ソムキット副首相が参加、日本の国際協力銀行(JBIC)は前田匡史総裁が参加して、タイの首相官邸で実施されました。

(2019年3月7日 タイ首相官邸にて、日本の国際協力銀行(JBIC)の表敬訪問と協議
写真:タイ首相官邸)

協議後、タイのソムキット副首相は「日本の国際協力銀行(JBIC)は、日中協力を背景にした、EECを含む地域への大規模な投資を支援するための資金援助をするという方針」だと語りました。

これについてPJA NEWSではJBIC(日本国際協力銀行)にも継続的に取材をしています。

JBIC(日本国際協力銀行)はPJA NEWSの取材に応じ、2019年3月20日にはタイ高速鉄道の本路線について、プロジェクトの進捗を議論しているものの、(融資について)なんらかの決定はまだされていない事を語っています。

PJA NEWS)今日のタイ高速鉄道の記事に、日本の国際協力銀の見解を追記 (2019年3月20日)
https://pattayaja.com/2019/03/20/3390/

そして先月の2019年8月26日、JBICはPJA NEWSの取材に応じ、CPグループの契約締結も近いと言われていたこの時点でも、まだ融資の決定などはされておらず、状況は特段変わっていない事を語っています。

写真は高速鉄道イメージ

PJAニュースの以下の過去記事の通り、タイ高速鉄道の中で実現性が高い本”EEC路線”は、政治主導で日中協力事業となった事で、今後どうなるか推移に注目が集まっていました。

PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道で唯一実現性の高いEEC路線、政治と現実に隔たり (2018年11月1日)
https://pattayaja.com/2018/11/01/pja-news%E3%82%BF%E3%82%A4%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%89%84%E9%81%9

本路線は現状、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しており、日本政府はこれを否定している最中にあります。

PJAニュース過去記事)中国政府「タイでの日中協力事業は一帯一路の一環」日本政府は否定(2019年3月9日)
https://pattayaja.com/2019/03/09/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%94%BF%E5%BA

本路線について、CPグループ率いるコンソーシアムが落札しました。

このCPグループのコンソーシアムの主要な参加企業はタイと中国の企業です。

この路線を現在、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しているわけですから、日本人としてはEECエリアの発展は嬉しいものの、この路線を建設するのに日本の政策金融機関であるJBIC(日本国際協力銀行)が、仮に2,240憶バーツ(*)という大規模な融資をして開発するなら、中国政府に「一帯一路」の一環だと位置付けられたままで実施するのではなく、タイと日本の協力の為のプロジェクトとして実施して欲しいと思います。

(*)融資規模については、タイのソムキット副首相のコメントとして以下記事で報道されているものを引用しました。ただし日本の国際協力銀行(JBIC)はPJAニュースの取材に、融資規模も含めて具体的な決定は、取材時点においてされていないとしています。

加えて、資金を日本の政策金融機関であるJBIC(日本国際協力銀行)が出したとしても、落札したのは中国やタイ企業が中心のCPグループのコンソーシアム、さらに土地の収用が問題で、そこではタイの汚職問題が蔓延しているわけですから、このJBICが融資した巨額な日本からの資金が適切に使われるのか、日本のJBICの権利が投資後も本当に守られるのか、日本側には疑問が残ります。

以下の既報の通り、タイ政府や日本の当局は、このようなタイの汚職問題の蔓延の取り締まりを行っている最中にあります。
日本側から見ると、このような摘発がきちんと行われて問題が改善され、日本からの投資が適切に行える環境となるのか、これを見ながら判断をすることが求められています。

PJA NEWS)タイ)PACC、レイモンランド開発のUnixxでの贈収賄疑惑を捜査
https://pattayaja.com/2019/09/13/6358/

PJA NEWS)タイ)省庁の公職を贈賄で取引、タイ汚職防止機構ACTの事務局長が告発
https://pattayaja.com/2019/09/23/6541/

PJA NEWS)タイ公務員への贈賄で日本で有罪判決 日本版司法取引第一号
https://pattayaja.com/2019/09/15/6388/

タイ高速鉄道のEEC路線、最終の契約期限も定められた本路線の行方に、注目が集まっています。

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