2019年11月24日 PJA NEWS)
続報:パタヤ)Grabのタクシーがストライキ続行!配達されない事が増加
2019年11月19日に報じた、Grabのドライバーがパタヤでストライキを起こしたニュースに続報です。
PJA NEWS)パタヤ)Grabドライバー150人以上がストライキ!待遇改善求め (2019年11月19日)
https://pattayaja.com/2019/11/19/7623/
本日の2019年11月24日の午後、Grabのドライバー約75人が集まり、ストライキを再度行い配達を拒絶する事をアピールしました。
パタヤ現地メディアのThe Pattaya Newsが伝えています。
パタヤのストライキに集まった
Grabのドライバーたち
写真:The Pattaya News)
このGrabのドライバーのストライキは、2019年11月18日の午後に始まりました。
同日、パタヤの大型スーパーの「BigCサウスパタヤ店」の駐車場に、Grabのタクシードライバー150人以上が集まり集会を開き、ドライバーたちは口々に、Grabからのドライバーへの支払いが少なすぎる、待遇が悪すぎると不満を語っており、ストライキが決定されました。
ストライキにより、Grabのドライバーたちは、Grab社がきちんとした回答と対応をしない限り、Grabの配達を行わないとしていました。
ストライキをするドライバーを代表している44歳のタイ人男性、Sanoh EngsengさんはThe Pattaya Newsの取材に、最近もGrabはポリシーを変更し、安い料金を提示するために、ドライバーへの支払いを酷く減らしていると語りました。以前は一回の配達でドライバーには55バーツが支払われていましたが、ポリシーが変更されると35バーツと、ほぼ半額に減らされたということです。
さらに集会の他の参加者たちは、Grabの運送には、保険もなくドライバーの自己責任とされているし、ガソリン代すらもGrabは出さず、ドライバーが負担するとなっており、酷い条件だと語っています。
またドライバーたちは、パタヤでもGrabは配達可能エリアを拡大し、パタヤ南部のナ・ジョムティエンや、パタヤの線路の東側で「ダークサイド」と呼ばれるエリアまで拡大しているのに、それによる追加の費用の支払いもされず、さらに長時間労働になっても何ら追加支払いがないと訴えています。
これについて、本日の2019年11月24日の午後、パタヤではGrabのドライバー約75人が集まり、再度ストライキを行う事を決定してアピールしました。
ドライバーたちは、Grabはその後もストライキへの対応も回答もしておらず、待遇改善もせずに、スタッフを無視していると語っています。
これを受けてドライバーたちは団結を示し、Grab社と戦うとアピールしました。
また、The Pattaya NewsがSNSなどを調べた所、本日までにパタヤではGrab Foodが機能しておらず、頼んでも食事が配達されないという問題が起きている事を確認していると伝えています。
報道されている概要は、上記の通りです。
ドライバーたちによると、Grab社は回答も対応もせずに無視を続けているということです。
異常な安さと、それによる手軽さで、タイで急速に拡大するGrabサービス。
食事を配達してくれるGrab Foodなどもよく目にします。しかし、この安さのためにドライバーをここまで酷い労働条件にしていたら、ストライキのリスクももちろんですが、ドライバーによる犯罪リスクなども高まりそうで、安心できない状況にあります。
もう少し大きな視点で見ると、インターネットというITツールにより「マッチング」の利便性はかつてないほど上がっていますが、それにより最安の賃金で労働者を企業が得ようとする動きも加速しており、まるで資本主義が行きすぎた18世紀~19世紀のような状況が、現在に起きているという事を実感します。
18世紀~19世紀は、貧富の格差の行きすぎや搾取の酷さを、労働組合の結成と団結しての戦い、そして民意を受けた国が社会主義的な手法も入れることなどで、改善がされてきました。
この頃には、それを改善するために尽力する経済学者としてマーシャルやケインズも現れ、新たな経済理論も多く提唱され、経済学も社会に貢献するために大きな発展を遂げました。
PJA NEWSの過去記事でも、マーシャル(アルフレッド・マーシャル)について以下のようにご紹介しました。
https://pattayaja.com/2019/10/29/7298/
「熱い心と、冷たい頭を持て」
(アルフレッド・マーシャル 1885年、ケンブリッジ大学経済学教授の就任講演より)
アルフレッド・マーシャル
19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの経済学者。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%ABアルフレッド・マーシャルは新古典派経済学の第一人者で、イギリスのケンブリッジ大学にケンブリッジ学派を構成した学者です。
「経済学原理」(1890年)などが有名で、「マーシャルのk」など、その先進的な経済理論でも卓越しており、経済理論の分野での偉人として有名なのですが、同時に人間性も豊であったらしく、筆者としてはとても興味深い歴史上の人物の一人です。元々マーシャルは、ロンドンの貧民街で暮らす階級社会における最下層の人々の惨状を目の当たりにし、この貧民を助けなければいけないという使命感を感じて、経済学に転向して経済学者として大成するに至ったと言われています。
そのためマーシャルの経済理論は、結果的に労働者の賃金を上げる、もしくは過酷な労働を和らげることを目標としていました。
そして、理論が現実から乖離すれば、それは「単なる暇つぶし」にすぎないとし、現実の問題が理論上の問題と混合されないように警鐘を鳴らしていたといいます。上記のマーシャルの言葉の原文は”Cool Head,but Warm Heart.”で、これを冷たい頭と、熱い心を持てと訳したものです。
この言葉はケンブリッジ大学の就任公演でも語られていますが、マーシャルは実際にはこの言葉を何度も語っていたらしく、ロンドンの貧民街にケンブリッジ大学の学生たちを連れて行き、そこでこの言葉を語ったという記録も残っています。
「経済理論を学ぶ為には、理論的で冷静な頭脳も勿論必要だが、この貧民街の多くの人々の生活をなんとかしたいという、熱い心も大切なのだ」という事を、学生たちに伝えようとしたのではないでしょうか。
現代のIMF(International Monetary Fund, 国際通貨基金)などが設立されたのも、マーシャルの教え子であるケインズや、ハリーホワイトの功績によるものです。
筆者は、卒業した大学が商学、経済学などを専門とする一橋大学だった事もあり、経済学は学生時代には基本的な概要ぐらいは勉強してきました。
その勉強をした折に、しみじみと思った事ですが、こういう格差が酷くなり、可哀そうな人が多くなってしまう時代には、経済学も哲学というべき側面が強くなり、行きすぎた搾取や貧富の差に苦しむ人を助けたいと思う人の気持ちが集まって、経済学は大きな改善と進歩がされてきたのです。それは、過去の経済学の進化の歴史が表しています。
2019年の現代において、この行きすぎてしまっている資本主義と格差、搾取の酷さは、どうやって社会的な視点で改善するかを考えないといけない状況にあるのだと思います。
そんな事を考えると思い出す、ケインズが晩年近くに語った言葉があります。
ケインズは常々、経済学は哲学であると語っていました。そのケインズが、弟子たちに語った言葉です。
「その時代の中心となっている経済学がすでに役に立たないとはっきりしたのならば、その時こそ君たちがあらたに有益な経済学を打ち立てなさい。
既存の経済学が、どんなに権威ある経済学者のものでも決して恐れるな。相手がたとえアダム・スミスであれ、カール・マルクスであれ、このジョン・メイナード・ケインズであれだ。」
(ジョン・メイナード・ケインズ:Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BA
現代においては、既存の経済学を打ち破り、社会的な平等性を確保するための経済理論も必要とされているのではないか。
ケインズの言葉を思い出し、このようなニュースや現実を見ていると、そう思われます。
※PJAニュースは、パタヤの有力メディアであるThe Pattaya Newsの公式パートナーとして日本語版を配信しています。
本ニュースの元記事のタイ語版、英語版等は、以下でご覧下さい。
The Pattaya News(英語版)
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