2020年2月21日 PJA NEWS)
タイ憲法裁、新未来党に解党命令!幹部16人は政党活動10年禁止
本日の2020年2月21日の午後、タイの憲法裁判所は、タイの第三党で若年層から特に支持のある新未来党の憲法違反を認定し、解党命令を出しました。
パタヤ現地メディアのThe Pattaya Newsは、重要なポイントとして以下を伝えています。
(新未来党のタナトン党首<写真中央>
写真:The Pattaya News報道)
タイの新未来党は以下の過去記事の後も、党がタナトン党首個人から巨額の資金を借り入れていた事は実質的な資金供与にあたり違法だとして、タイ憲法裁判所に対しタイ選挙管理委員会から、新未来党の解党を求める訴えが起こされていました。
PJA NEWS)速報:タイ憲法裁、新未来党に憲法違反は無いと判断 政党継続へ (2020年1月21日)
https://pattayaja.com/2020/01/21/8336/
この訴えについて本日の2020年2月21日午後、タイ憲法裁判所は違法性を認定する決定を行い、第三党で反軍政の新未来党の解党を命じました。また、タナトン党首を含む新未来党幹部の16人は今後10年間、政党活動を行う事が禁止されました。
(抗議集会での新未来党のタナトン党首
写真:Prachaitai English ツイッターより)
タイ憲法裁判所の本日の判決の際、新未来党の人間は裁判所に姿を見せず、党本部にいる事を選びました。
新未来党の議員のうち政党活動が禁じられていない68人は、議員に留まるためには今後60日以内に他の政党に移籍する事が必要です。
報道されている概要は上記の通りです。
さらに、タイ大手英字メディアのBangkok Postの以下報道によると、訴えを起こしたタイ選挙管理委員会は違法性が認定され政党活動が禁じられたタナトン党首を含む新未来党の幹部16人には刑事裁判の訴えを起こす事が今後は可能となり、これで有罪となった場合は、タナトン党首は最大で懲役5年、他は懲役3年、さらに1000万バーツ以上、一億8130万バーツ以下の範囲の中の金額の罰金刑となる可能性があります。
Bangkok Post)FFP dissolved, executives banned for 10 years (2020年2月21日)
Bangkok Post)新未来党に解党命令、幹部は10年間の政党活動禁止
https://www.bangkokpost.com/thailand/politics/1862769/ffp-dissolved-executives-banned-for-10-years
反発が広がる危険性
新未来党の処遇を巡っては、昨年の5月23日にタイ憲法裁により同党の党首が議員資格を停止された事や、憲法裁に解党を求める訴えを多数起こされている事など、あまりにも抑圧をされているという反発が特に若年層を中心に広がっています。
PJA NEWS)タイ憲法裁、新未来党タナトン党首の議員資格を停止(2019年5月23日)
https://pattayaja.com/2019/05/23/4653/
新未来党への支持を示そうと、昨年12月14日にはバンコクで2014年の軍事クーデター以降で最大となる数千人規模の政治集会が開催されました。
PJA NEWS)バンコク)新未来党、タナトン党首が最大規模の政治集会を開催(動画付き)
https://pattayaja.com/2019/12/15/7929/
その抗議活動の様子を撮影したツイッターの動画が以下のものです。
#ไม่ถอยไม่ทน – 18.20 น. ผู้เข้าร่วมยังอยู่เต็มพื้นที่หน้าหอศิลปฯและสกายวอล์คปทุมวัน pic.twitter.com/YdlxGWesaK
— iLawFX (@iLawFX) December 14, 2019
抗議活動はパタヤにも広がり、先月の1月12日には以下の過去記事の通りパタヤのビーチロードでの抗議のデモ行進がありました。
PJA NEWS)パタヤ)バンコクと同日、警察署前で反政府デモ行進(動画付き) (2020年1月13日)
https://pattayaja.com/2020/01/13/8251/
(2020年1月12日
パタヤのビーチロードでのデモ行進
写真:The Pattaya News)
このような状況の中で本日、タイの憲法裁判所から新未来党への解党命令が出されたため、さらに反発が強まる事が懸念されます。
西側各国の反応にも注目が集まる
新未来党への圧力は、西側各国からの注目が高い状況にあります。
以下の過去記事の通り、昨年の2019年4月6日、新未来党のタナトン党首は警察に出頭命令を受けて、バンコクのパトゥムワン警察署に出頭しました。
PJA NEWS)新未来党への聴取に西側外交官多数、タイ外相が批判し国際問題化(動画付き) (2019年4月12日)
https://pattayaja.com/2019/04/12/3933/
この際に問われた容疑は扇動罪(タイ刑法第116条)、逃亡在(同第189条)、及び10人以上の集会で社会的な不安を起こした罪の容疑がかけられて警察署へのこれらの容疑はそれぞれ最大7年、2年および6ヶ月の懲役刑となる可能性があるもので、このタイ警察の容疑は、新未来党が野党として躍進したせいで嫌がらせだと反発が広がり、大きな注目を浴びました。
(2019年4月6日 パトゥムワン警察署を訪れたタナトン党首と支援者
写真:新しい未来党タナトン党首Facebookより)
この折にはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ、ベルギー、フィンランド、オランダ、ニュージーランドの外交官もしくはその代理が、パトゥムワン警察署を訪れていました。また、EUと国連の人権担当官も状況を見に訪れていました。
この時には直後の2019年4月9日、タイのドン外相は、西側各国の対応はタナトン党首側に偏ったものであり、「タイへの内政干渉である」として非難していました。そして翌4月10日の夜にはタイ語版のウェブサイトで、西側各国を非難する声明を発表しました。
この声明は、上記の西側各国および欧州連合に対して、タナトン党首がパトゥムワン警察署に召喚された際に参加していた事について、失望と懸念を表したものです。
声明は「本行為は外交官の役割を逸脱しており、タイへの内政干渉と同等である。これは1961年のウィーン条約第41条に基づく外交議定書にも違反している」と述べて西側各国を批判し、その上でタイ外務省の副次官補は、対象となる各国の外交官に、事件の再発防止のための行動を求めました。
これを受けて、西側各国の外交官も反応し、このタイ外相からの非難を即座に否定しました。
声明の翌日の2019年4月10日、米国海軍大臣のピーター・ヘイモンド氏が本件について外務省高官と会談した事を在タイ米国大使館のスポークスマンが語り、その上で次のようにコメントをしました。
「米国大使館は、公正な裁判の保証を遵守し、法の支配を尊重するために、世界中の注目の訴訟を定期的に傍聴、調査しています。
この訴訟に対する米国政府の関心は、他の多くの訴訟と同様に、司法プロセスを遵守した訴訟手続きがされているのかを調査する為に、直接情報を入手することです。」
また、EUの使節団からもタイ政府への声明が出されました。
声明において、EUの使節団は次のように語っています。
「公聴会や裁判の監視は、世界的に標準とされる外交的慣行です。
その目的は、人権や司法における適正な手続などの国際司法の標準が遵守されているか、その理解を高めることにあります。
そのような監視は、決して当該国における政治的な選好や、特定の政党や個人に対する支持を示すものではありません。」
EUの声明においては、タイ警察に対して「観察を容易にし、外交官たちに説明することを申し出たことにおける」協力について、感謝を表しました。
このような経緯があっての、本日のタイ憲法裁の新未来党の解党命令。
西側各国の反応は本記事執筆時点でも広がりつつあり、今後これが大きな動きとなるかどうかにも注目が集まります。
西側諸国の近代政府の基本概念としては、司法権は政権から独立していなければならず、かつ司法における国際標準が守られなければなりません。この司法の国際標準を確立するために、外交官が当該国の訴訟手続きを調査する事は、民主主義国家である西側諸国では通常の外交官の業務です。
これは日本も同様の問題を抱えていますが、真に民主的な国となっていくために、このような概念をも取り入れていく事が求められているのではないでしょうか。
このようなニュースを見て思い出すのが、日本の第45、48~51代の内閣総理大臣、吉田茂の以下の言葉です。
「新憲法によって、わが国のいわゆる「民主政治」が確立されたが、現在の政治の形態がはたして当初に期待された如きものであるや否や。
真に民主政治が確立されるまでは、国民は深き注意をもって常に政治、政局の推移を監視せねばならぬ。」
(吉田茂 1878年9月22日~1967年10月20日 第45、48~51代内閣総理大臣)
Wikipedia) 吉田茂
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E8%8C%82
※PJAニュースは、パタヤの有力メディアであるThe Pattaya Newsの公式パートナーとして日本語版を配信しています。
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