2020年3月3日 PJA NEWS)

バンコク)Grabバイタクに、地元バイタクが大喧嘩!衝撃動画が話題に(動画付き)

一昨日の2020年3月1日、バンコクのプラカノンにあるコンドミニアムの前で、女性が呼んだGrabのバイクタクシーに乗ろうとしたのを、地元のタクシー業者が見つけて口論、そして複数のタクシー業者たちによる暴行となる事件がありました。

女性は暴行の様子を動画に撮影、Facebookに投稿し、Grabのタグも付けて

”Grab社は、ドライバーや利用者の安全も守らずに、こんな状況を放置している”

と訴えました。この動画と投稿が大きな反響を呼んでいます。

パタヤ現地メディアのThe Pattaya Newsが伝えています。

(利用者の女性が投稿した動画
画像:利用者の女性のFacebookより
The Pattaya News報道)

事件があったのは一昨日の2020年3月1日、女性がバンコクのプラカノンにある自宅のコンドミニアム前に、Grabのバイクタクシーを呼んだ事がきっかけです。

これを見た現地のバイクタクシー業者が、ここは自分たちのテリトリーであり、Grabのバイクタクシーはここで客を乗せる事は禁止されていると言い、口論になりました。

この様子を見て他の現地のバイクタクシーのドライバーも参加、Grabのバイクタクシーのドライバーへの暴行が行われました。

利用者の女性は、この様子を動画に撮影し、Facebookに投稿。

投稿の際にGrabのタグも付けて

「Grab社さんへ

Grab社は、ドライバーの安全に責任を持つべきです。

私のGrabバイクタクシーは、こんなに殴られています。私は幸いにも大きな怪我ではありませんでしたが、顔を殴られました。

一体、Grab社のドライバーや利用者への安全とは、どこにあるんですか?」と投稿しました。

この動画と投稿は本記事執筆時点の2020年3月3日午後2時の時点で既に53万回以上も再生され、大きな反響を呼んでいます。

女性のFacebookの動画の投稿は、暴行事件の現場の動画となりますので、閲覧には注意が必要です。

PJA NEWSでは動画の引用はせず、閲覧の注意の上で以下にURLをご紹介します

女性のFacebook投稿(動画)、暴行事件の現場の動画ですので、閲覧にはご注意下さい。
https://www.facebook.com/amittaaphongsawat/videos/2649184048636234/?epa=SEARCH_BOX

(利用者の女性が投稿した動画
画像:利用者の女性のFacebookより
The Pattaya News報道)

暴行を受けたGrabタクシーは警察に被害届を提出、タイ警察は暴行を行ったバイクタクシーのドライバーたちに、暴行罪で1人1000バーツの罰金を科しました。

報道されている概要は上記の通りです。

タイでは、もともとバイクタクシーは担当範囲が決められ、許可を得た人間がオレンジ色の上着を着て、バイクタクシーを営業する事が認められています。

一方で、ネットのアプリで営業するGrabはこれらの許可を得ず、バイクタクシーをアプリで行っており、このことから市場で多くの摩擦を生んでおり、このような暴行事件は頻発しています。

PJA(パタヤ日本人会)の事務局の目の前でも、以下の過去記事の通り昨年の11月26日夜に大規模なバイクタクシーとGrabタクシーとの間の暴行事件が起きています。

PJA NEWS)パタヤ)PJA目の前、Grabドライバー達約10人が一般タクシーと大喧嘩!(2019年11月27日)
https://pattayaja.com/2019/11/27/7771/

(2019年11月26日夜
喧嘩に警察が到着した直後の様子
写真:The Pattaya News)

上記のPJA事務局の目の前での殴り合いの際、Grabのドライバーの何人かはGrabのユニフォームを着て喧嘩をしていました。

これを受けてタイ警察では、負傷させたGrabのドライバー達だけでなく、Grab社にも責任があるとして、警察で捜査と法的手続きを進めています。

一方で、Grab社はドライバーへの支払いも極端に減らしており、ドライバーによるストライキはパタヤでも起きており、Grabの配達がストライキによりされないといったトラブルも起きています。

このストライキに対してもGrab社は誠意ある対応など一切していないとドライバー達は語り、以下のように窮状をメディアに答えています。

(2019年11月18日
ストライキをする、集会に集まったGrabのタクシードライバーたち
写真:The Pattaya News)

PJA NEWS)パタヤ)Grabドライバー150人以上がストライキ!待遇改善求め (2019年11月19日)
https://pattayaja.com/2019/11/19/7623/

PJA NEWS)続報:パタヤ)Grabのタクシーがストライキ続行!配達されない事が増加 (2019年11月24日)
https://pattayaja.com/2019/11/24/7692/

PJA NEWS)https://pattayaja.com/2019/11/25/7701/ (2019年11月25日)
https://pattayaja.com/2019/11/19/7623/

ストライキをするドライバーを代表している44歳のタイ人男性、Sanoh EngsengさんはThe Pattaya Newsの取材に、最近もGrabはポリシーを変更し、安い料金を提示するために、ドライバーへの支払いを酷く減らしていると語りました。以前は一回の配達でドライバーには55バーツが支払われていましたが、ポリシーが変更されると35バーツと、ほぼ半額に減らされたということです。

さらに集会の他の参加者たちは、Grabの運送には、保険もなくドライバーの自己責任とされているし、ガソリン代すらもGrabは出さず、ドライバーが負担するとなっており、酷い条件だと語っています。

またドライバーたちは、パタヤでもGrabは配達可能エリアを拡大し、パタヤ南部のナ・ジョムティエンや、パタヤの線路の東側で「ダークサイド」と呼ばれるエリアまで拡大しているのに、それによる追加の費用の支払いもされず、さらに長時間労働になっても何ら追加支払いがないと訴えています。

このようにして、ドライバーの保護も利用者の保護もなく、ドライバーの労働力を異様に安くネットで購入する事で、異常な利用料金の安さとネットの手軽さで、タイで急速に拡大しているGrabサービス。これによる軋轢が、バンコクでも今回の暴行事件となって大きな反響を呼んでいます。

また、タイでは安くしすぎて質が悪化しているGrabドライバーが、利用者のコンドミニアム内や一戸建て内に簡単に入り込めてしまう事による窃盗や強盗、女性への強姦などの犯罪事件も多発しており、大きな社会問題となっており、これにより邦人の居住地も含めて危険にさらされてしまっています。

食事を配達してくれるGrab Foodなどもよく目にします。

しかし、この安さのためにドライバーをここまで酷い労働条件にしていたら、ストライキのリスクももちろんですが、ドライバーによる犯罪リスクなども高まりそうで、安心できない状況にあります。

そこで、今回のようにドライバーや利用者の保護もせずに軋轢を起こしていたら、社会から大きな批判と反発を食らうのは当然でしょう。

この問題、もう少し大きな視点で見ると、インターネットを使ったITツールにより「マッチング」の利便性はかつてないほど上がっている中で、それにより最安の賃金で労働者を企業が得ようとする動きも加速してしまっており、まるで資本主義が行きすぎた18世紀~19世紀のような状況が、現在に起きているという事を実感します。

Grabのような格差の行きすぎに思う、社会的な視点も含めた改善の必要性

かつて18世紀~19世紀は、貧富の格差の行きすぎや搾取の酷さを、労働組合の結成と団結しての戦い、そして民意を受けた国が社会主義的な手法も入れることなどで、改善がされてきました。

この頃には、それを改善するために尽力する経済学者としてマーシャルやケインズも現れ、新たな経済理論も多く提唱され、経済学も社会に貢献するために大きな発展を遂げました。

PJA NEWSの過去記事でも、マーシャル(アルフレッド・マーシャル)について以下記事などで紹介してきました。

追悼)日本人初の国連難民高等弁務官、緒方貞子さん死去

現代のIMF(International Monetary Fund, 国際通貨基金)などが設立されたのも、マーシャルの教え子であるケインズや、ハリーホワイトの功績によるものです。

筆者は、卒業した大学が商学、経済学などを専門とする一橋大学だった事もあり、経済学は学生時代には基本的な概要ぐらいは勉強してきました。

その勉強をした折に、しみじみと思った事ですが、こういう格差が酷くなり、可哀そうな人が多くなってしまう時代には、経済学も哲学というべき側面が強くなり、行きすぎた搾取や貧富の差に苦しむ人を助けたいと思う人の気持ちが集まって、経済学は大きな改善と進歩がされてきたのです。それは、過去の経済学の進化の歴史が表しています。

現代において、新たなツールも使った事で、また行きすぎてしまっていると感じられる資本主義と格差の酷さは、タイに限らず各国において、どうやって社会的な視点で改善するかを考えないといけない状況にあるのではないかとも思います。

そんな事を考えると思い出す、ケインズが晩年近くに語った言葉があります。

ケインズは常々、経済学は哲学であると語っていました。そのケインズが弟子たちに語った言葉です。

「その時代の中心となっている経済学がすでに役に立たないとはっきりしたのならば、その時こそ君たちがあらたに有益な経済学を打ち立てなさい。

既存の経済学が、どんなに権威ある経済学者のものでも決して恐れるな。相手がたとえアダム・スミスであれ、カール・マルクスであれ、このジョン・メイナード・ケインズであれだ。」

(ジョン・メイナード・ケインズ:Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BA

現代においては、既存の経済学を打ち破り、社会的な平等性を確保するための経済理論も必要とされているのではないか。

このようなニュースや現実を見ていると、ケインズの言葉なども思い出して、その必要性を思わされます。

※パタヤでのGrabドライバーたちのストライキを伝えるニュース動画(The Pattaya News、英語版)

※PJAニュースは、パタヤの有力メディアであるThe Pattaya Newsの公式パートナーとして日本語版を配信しています。

本ニュースの元記事のタイ語版、英語版等は、以下でご覧下さい。

The Pattaya News(英語版)The Pattaya News(タイ語版)

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