2019年10月13日 PJA NEWS)

タイ高速鉄道)どうなるEEC路線!?契約期限延長、副首相が不満

以下のタイ高速鉄道の、バンコクの2空港とラヨーン空港の3つの空港を結ぶ、いわゆる「EEC路線」のニュースに続報です。

PJA NEWS)タイ高速鉄道)どうなるEEC路線!?10月15日までの契約期限を通告 (2019年9月24日)
https://pattayaja.com/2019/09/24/6579/

(写真は高速鉄道イメージ)

2019年10月15日だった契約期限が、10月25日に延長されました。
この一連の動きの中で、タイのAnutin副首相が不満をコメントしています。

タイの大手英字メディアであるBangkok Postが今週の2019年10月10日、以下の通り報じています。

Bangkok Post)Play by the rules: Anutin (2019年10月10日)
Bangkok Post)Anutin副首相「ルールを守れ」
https://www.bangkokpost.com/business/1768529/play-by-the-rules-anutin

今週木曜の2019年10月10日、タイのAnutin副首相(タイ誇り党:党首)はFacebookにコメントを投稿しました。

Anutin副首相(タイ誇り党:党首)
写真:タイ誇り党

コメントでAnutin副首相は、CPグループについて名指しはせずに、「ルールに従った行動をしなければならない」と記載しました。

その上でコメントで

「政府を利用しようとしているのは誰ですか?
入札の結果に従わないようにしているのは誰ですか?
自分の利益のために、入札規則の緩和を求めているのは誰ですか?

政府によって最初から発表されていたルールに従い、ロビー活動をやめて、契約書に署名するためにペンを持参するべきだ」と記載しました。

タイの運輸大臣は今週火曜の2019年10月8日、SRT(タイ国鉄)の新しい委員を任命するために、2019年10月15日としていた契約期限を、2019年10月25日に延期しました。

報道されている概要は、上記の通りです。

SRT(タイ国鉄)の委員が辞任してしまい、新委員を任命するためとして、前回記事で報じた10月15日の契約期限は、今週火曜に10月25日に延長されました。これを受けて、Anutin副首相が今週木曜に不満を表したものと考えられています。

EEC路線、JBIC(日本国際協力銀)は「まだ決定は何らされていない」

タイ高速鉄道:EEC路線の予定図
タイEEC委員会資料より

タイのEEC路線は、閣議決定がされた後もCPグループ側は契約の締結に難色を示しており、先行きは不透明な状況が続いています。

さらに、この高速鉄道の投資資金についても疑問が残ります。

同路線についての資金について、タイ政府は以下の過去記事の通り、3月7日に日本のJBIC(日本国際協力銀行)と協議し、JBICからの融資で実現する事を検討しています。

PJA NEWS)タイ高速鉄道:日本の国際協力銀行、EEC路線を支援検討(2019年3月10日)
https://pattayaja.com/2019/03/10/3224/

3月7日の協議には、タイ政府側はプラユット首相、ソムキット副首相が参加、日本の国際協力銀行(JBIC)は前田匡史総裁が参加して、タイの首相官邸で実施されました。

(2019年3月7日 タイ首相官邸にて、日本の国際協力銀行(JBIC)の表敬訪問と協議
写真:タイ首相官邸)

協議後、タイのソムキット副首相は「日本の国際協力銀行(JBIC)は、日中協力を背景にした、EECを含む地域への大規模な投資を支援するための資金援助をするという方針」だと語りました。

これについてPJA NEWSではJBIC(日本国際協力銀行)にも継続的に取材をしています。

JBIC(日本国際協力銀行)はPJA NEWSの取材に応じ、2019年3月20日にはタイ高速鉄道の本路線について、プロジェクトの進捗を議論しているものの、(融資について)なんらかの決定はまだされていない事を語っています。

PJA NEWS)今日のタイ高速鉄道の記事に、日本の国際協力銀の見解を追記 (2019年3月20日)
https://pattayaja.com/2019/03/20/3390/

そして2019年8月26日、JBICはPJA NEWSの取材に、CPグループの契約締結も近いと言われていたこの時点でも、まだ融資の決定などはされておらず、状況は特段変わっていない事を語っています。

 

PJAニュースの以下の過去記事の通り、タイ高速鉄道の中で実現性が高い本”EEC路線”は、政治主導で日中協力事業となった事で、今後どうなるか推移に注目が集まっていました。

PJAニュース過去記事)タイ高速鉄道で唯一実現性の高いEEC路線、政治と現実に隔たり (2018年11月1日)
https://pattayaja.com/2018/11/01/pja-news%E3%82%BF%E3%82%A4%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%89%84%E9%81%9

本路線は現状、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しており、日本政府はこれを否定している最中にあります。

PJAニュース過去記事)中国政府「タイでの日中協力事業は一帯一路の一環」日本政府は否定(2019年3月9日)
https://pattayaja.com/2019/03/09/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%94%BF%E5%BA

本路線についてCPグループ率いるコンソーシアムが落札し、現在の契約締結がされるのかどうかのせめぎ合いとなっています。

このCPグループのコンソーシアムの主要な参加企業は中国とタイの企業です。

この路線を現在、中国政府が「一帯一路」の一環だと発表しているわけですから、日本人としてはEECエリアの発展は嬉しいものの、この路線を建設するのに日本の政策金融機関であるJBIC(日本国際協力銀行)が仮に2,240憶バーツ(*)という大規模な融資をして開発するなら、中国政府に「一帯一路」の一環だと位置付けられたままで実施するのではなく、タイと日本の協力の為のプロジェクトとして実施して欲しいと思います。

(*)融資規模については、タイのソムキット副首相のコメントとして以下記事で報道されているものを引用しました。ただし日本の国際協力銀行(JBIC)はPJAニュースの取材において、融資規模も含めて具体的な決定は、取材時点においてされていないとしています。

加えて、資金を日本の政策金融機関であるJBIC(日本国際協力銀行)が出したとしても、落札したのは中国やタイ企業が中心のCPグループのコンソーシアム、さらに土地の収用が問題で、そこではタイの汚職問題が蔓延しているわけですから、このJBICが融資した巨額な日本からの資金が適切に使われるのか、日本のJBICの権利が投資後も本当に守られるのか、日本側には疑問が残ります。

以下の既報の通り、タイ政府や日本の当局は、以下のようにタイの汚職問題の蔓延の取り締まりを行っている最中にあります。
これが解決しなければ、贈賄を行えない日本の権利は守られなくなりますから、日本側から見ると、このような摘発がきちんと行われて問題が改善され、日本からの投資が適切に行える環境となるのか、これを見ながら判断をすることが求められています。

PJA NEWS)タイ)PACC、レイモンランド開発のUnixxでの贈収賄疑惑を捜査
https://pattayaja.com/2019/09/13/6358/

PJA NEWS)タイ)省庁の公職を贈賄で取引、タイ汚職防止機構ACTの事務局長が告発
https://pattayaja.com/2019/09/23/6541/

PJA NEWS)タイ公務員への贈賄で日本で有罪判決 日本版司法取引第一号
https://pattayaja.com/2019/09/15/6388/

タイ高速鉄道のEEC路線、最終の契約期限も定められた本路線の行方に、注目が集まっています。

※本高速鉄道ニュースについては、別途タイ語版をPJA NEWS Thaiで配信予定です。

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